6月リリースの『ひかりのなまえ EP』が充実作だっただけに、8月に突如発表された尾崎リノ(Vo・G)の卒業は衝撃だった。
Cody・Lee(李)の魅力の大きなひとつが、高橋響(Vo・G)と尾崎、男女ふたりのボーカルによって織り成される「歌」であり、高橋が紡ぐ日常と地続きにある歌詞は、尾崎の声を伴うことで、その生活の風景に「僕」と「君」、ふたつの視点を与え、物語に奥行きを生んでいたように思う。尾崎の声を失くしたCody・Lee(李)の音楽はどうなるのか。少しドキドキしながら、新曲のリリースを待っていた。
その後、9月にリリースされた“さよuなら”は、ジャケットに描かれた5本の薔薇が象徴するように「5人のCody・Lee(李)」との「さようなら」をいつにも増して等身大の言葉で綴った曲で、聴くと胸がぎゅっと締めつけられたのだけれど、今週リリースされた新曲“涙を隠して(Boys Don't Cry)”は、「4人のCody・Lee(李)」が「涙を隠し」ながら、僕らを安心させるために交わす誓いのような曲だった。
この曲が描く道は決して平坦ではない。《解けた靴紐》《五限目のメモリー》《各停の電車》のような平凡な日常のパッチワークの中にふと差し込まれる《自分が特別ではないという事/認めたらなんだか生きやすくなった》というメッセージに乗せてぐんぐんと進んでゆく歩みは、ひと呼吸を置くように《何を伝えようか考え》ながらペースダウンする。ふと立ち止まったあとで、それでも道を切り拓いていく力毅(G)のギターソロの美しいこと! イントロのラフな4カウントも、ギターソロも、急に英語詞に変わってシンガロングが響くパートも、そのすべてが4分半で語られる物語にこれまでにない奥行きを生んでいて、彼らの新しい道行きを輝かしく照らしている。
ラスト、アウトロなしでプツッと歌が途切れるのもまた悲喜こもごもの人生のよう。最後にそっと添えられるのは《数百年後先 君が悲しい時/流れてくるのは愛の歌がいいな》という大きくてささやかな願いである。大きな“さよuなら”を乗り越えたCody・Lee(李)は、このとびっきりの愛の歌とともに前を向いてがむしゃらに歩いてゆくのだ。(畑雄介)
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