2013年に西日暮里のマックで出会い、「RIP SLYMEが好き」という共通点によって友だちになってから、今年で10年目を迎えるchelmico(いい話すぎる)。
10年の道のりには、メジャーデビューがあり、TVアニメ『映像研には手を出すな!』のOPテーマ“Easy Breezy”のヒットがあり、Rachelが「命2個持ち」(つまり母)になり、鈴木真海子名義でのMamikoのソロ活動が再び始まり……と、いろんな出来事があったけれど、ふたりの関係性はいつまでも変わらない。
性格も雰囲気もかなり違うふたりだし、プロとして音楽活動を続けるということはある意味「ビジネスパートナー」としてやっていくということでもあるはずなのに、新曲はいつも「ふたりで何か面白い世界を見せてやる」というクリエイティブへの瑞々しい衝動に貫かれている。ふたりの友だちとしての親密なコミュニケーションと固い信頼関係が、盟友・Pistachio Studioのメンバーだけでなく、パソコン音楽クラブやTomggg、長谷川白紙といった個性豊かなトラックメイカーと音楽的冒険にチャレンジできる柔軟さにつながっているし、曲ごとに音楽性を大きく変えても決して消えない個性を生み出しているのだろう。
10月にリリースされたEP『I just wanna dance with you — period』もその「友だちバイブス」に包まれた作品だった。表題曲“I just wanna dance with you — period”は、要するに「《アンタとダンスしたいよ/他に面倒なことしたくない》」「それな」という意味。脱力感のある(でも耳を澄ませばものすごく構築的な)トラックに乗せて、平熱なボーカルでぐだぐだとくだを巻く日々が歌われるけれど、《甘いから ナメてもいいよ/アタシたち やる気あるようでないのである》という言葉は決して無気力の肯定ではなく、気忙しい社会に対してぶちかまされたchelmico流のアッパーカットなのだと思う。実際、オーガニックなバンドサウンドに乗せた《まだまだ》のリフレインが気持ちいい“BLUE”では、《BLUE まだまだ/青くなるんだ/ずっといっしょに/BLUE まだまだ/愛に溢れてる/愛に溢れてる》と、バナナマンへのリスペクトを込めながら(“BLUE”はバナナマンの単独ライブのオープニング曲)、ちゃんとやる気に満ちた情熱を歌っている。
続く12月6日にリリースされた新曲“Qusetion”は、TBSドラマストリーム『恋愛のすゝめ』のOPテーマ。《分からないこと知りたいよ/教科書には載ってないよ/最後の一答/最初の1秒で決めていたよ/Now it’s time for the question》という歌詞は、ドラマの物語と呼応するものでありつつも、未来に向かっていつも“Question”を投げかけながら、未知の可能性に向かってまだまだ一歩を踏み出し続けるchelmicoの生き写しのようなメッセージだ。
4月から「蕎麦とハンバーガー」名義でのYouTubeチャンネルを開設し、7月からはポッドキャスト番組『chelmicoのオールナイトニッポンPODCAST』がスタート。ふたりのポジティブな空気が伝わる機会はたくさん増えているけれど、何よりもまず曲を通してそれをビシビシ体感してほしい。(畑雄介)
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chelmico、友だち10周年おめでとう! 未来に向かって“Question”を投げかけながら、ふたりはまだまだ未知の可能性に向かって一歩を踏み出し続ける
2023.12.11 18:30