インタビューの最後にMoto(Vo)は笑顔でそう語ってくれた。「みんなをお城にバンって閉じ込めるみたいな感じで、誰も逃がさないから(笑)」
アルバムを一聴すると、これが決して大げさな煽りでもなんでもないことがわかる。
『Welcome to My Castle』と題されたChilli Beans.の2ndフルアルバムは、「城」をテーマとした一枚。
城の中にあるさまざまな部屋をイメージした楽曲が詰め込まれていて、冒頭の“Intro”で固く閉ざされた大きな扉を開けると、たちまち夢の世界へと誘われる。
“Welcome”でまずメインホールで行われるパーティー会場に腕を引かれながら参加すると、最高にキュートでクールなグルーヴに気づけば身体が踊りだしてしまう。
一方、チリビ史上もっともディープでドープな世界が放出された“doll”では、自分がどこから来てどこに向かおうとしているのか、くるくると円環する万華鏡のように夢と現実が交錯していく。しかし意識はしっかりと覚醒していて、身体は自然と次の部屋へ……。
“wonderland”ではふかふかのベッドで頬杖をつきながら、刻む秒針に身を預けて物思いに拭けっていたかと思いきや、続く“105☻”では孤独と焦燥がふつふつと吹き出す汗のようにじんわりと全身にまとわりついて、振り払おうと身体を揺らしていると、鏡に映る自分は恍惚の表情で踊り始めている。そんな錯覚に陥っていると、ふと冒頭のMotoの言葉が蘇ってきた。
楽曲ごとにさまざまなアプローチで身体と心を躍動させるその圧倒的なポップセンスをもって、さながらテーマパークのアトラクションのようなスリルと興奮が押し寄せてくる。そんな彼女たちの思惑が見事結実した「城」の制作過程を、ぜひ誌面で確かめてください。(橋本創)
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