マカロニえんぴつの最新曲“月へ行こう”のギターサウンドに魅せられる

メロディの運びや歌われる「孤独」と「共存」の狭間を行き来する感情など、マカロニえんぴつらしさが存分に表れた楽曲“月へ行こう”。

イルミネー ション・エンターテインメントの最新映画『FLY !/フライ!』の日本版主題歌に起用されている今作は、一歩踏み出して広い世界に飛び出すための勇気を与えてくれる壮大なミディアムナンバーだ。
しかし意識を深くサウンドに傾けると、そこにはこれまで彼らが描いたことのないであろう壮大な荒野が広がっていることがわかる。


透明なフィルターが幾重にも重なり合うことで生まれるファジーなサウンドスケープ、テクニカルなビートで重力に抗うような浮遊感を醸し出すリズムセクション、はっとりの歌声を軽やかなヴェールで包み込む鍵盤、そして特筆すべきはタイトルが示す「月へ行こう」という明確な意志に「リアル」な実感を伴わせる歪んだギターの音色だ。

Bメロの《月へ行こう》の一言で一気に解放されると、サビではボーカルと併走するように力強くうねりを増していく。そのあとのギターソロでも抑圧された感情が解き放たれるように波打ちながら、再びサビになだれ込みはっとりの歌声を飲み込むように、互いに作用しながら突き進んでいく。

優しく軽やかに響き渡る歌声をギターの音色が、ひいてはバンドアンサンブルが包み込むことで重力のように抗いがたい実感が伴い初めて歌は「飛ぶ」ことができる。そしてそれらが生み出したサウンドが放つ引力に我々リスナーは引き寄せられていく。そんなプリミティブな構造に、マカロニえんぴつが2024年に見せるロックバンドとしてのアティチュードを垣間見た。(橋本創)


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