plentyの余韻

plentyの余韻

土曜日、雨の吉祥寺で行なわれたplentyのワンマンライヴ。
こんな天気のいい秋晴れの午後というのに、ふとした拍子にあの夜の空気が生々しく甦ってきて不思議な気持ちになる。
ライヴハウス前の長い列に加わって傘をさして並んだこと。開演前のミラーボールのきらめきとシガーロスの陶酔感。メンバーが登場しても歓声も拍手もまったくない水を打ったような静けさ、これから起こる事件をひとつ漏らさず見届けようという意志をもった沈黙。そして《理由なんてなくて》と響きわたる第一声――たった1時間なのにとても濃密で、特別な時間だった。

 もうねぇよここはなにもねぇよ くだらねぇよ全部くだらねぇ、と繰り返し吐き出される言葉。だけどドラムとベースの生み出すリズムはそんな無への誘惑を裏切るようにドクドクと脈打っている。パラノイド・アンドロイドのような真っ赤なオブセッションを感じさせる曲も、生命力がみなぎっている。
 曲の間に、時折、雨音や子供たちの笑い声、雑踏などのSEが地下のライヴハウスに流れ込む。世界のノイズを遮断せず、窓を開いてつながっている。それがplentyの素晴らしさだ。『拝啓。皆さま』の曲はやはりどれも圧倒的だけど、さらに一歩進んで、世界を変えたいという思いが強まっているような新曲がよかった。

発売日の先週は一時品切れ状態のお店もあったという『拝啓。皆さま』、まだ聴いてない人はぜひ。

ちなみに吉祥寺warpのライヴ、RO69ライヴレポートでもアップされてますが、次号JAPANでも追います。写真は現在発売中のJAPANロング・インタヴュー。(井上)
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