先週試写に行ってきた映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。ド肝を抜かれた。莫大な予算が投下されたわけでもないし、どこかの巨匠監督が撮ったわけでもないし、有名俳優たちが顔を揃えた、いわゆる豪華キャストなるものでもない。にも拘らず完璧に「もっていかれる」。2時間弱があっという間。相変わらず役者・峯田和伸の演技は「映画のマナー」を逸脱しているが、そんなことは、全く気にならない。というか、映画そのものに「もっていかれてる」のに、本来なら前提としてあるはずの「映画のマナー」なるものを忘れさせてくれる、そんな破壊力を持った映画なのだ。
「いい意味で原作に遠慮してない映画」と噛ませ犬の取材で峯田は言っていた。確かに原作漫画は、絶大な人気を獲得した00年代のマスターピース。熱烈な原作ファンの一人である峯田が、敢えて「遠慮なく」田西を演じたのは、この漫画にロックのエモーションを嗅ぎ付け、自らが演じる映画によってそのエモーションを極大化できると確信したからだろう。結果、この作品は“最強のロック映画"に、ある意味で「生まれ変わった」のだ。
個人的には、終盤、田西が激走するとある場面は、海の向こうの最強ロック映画「トレインスポッティング」を彷彿とさせた。公開は来年1月予定。(徳山)