を観てマイケルや、行われるはずだったライヴのことを書いても何なのだが、とにかく目から鱗が落ちたのはマイケルの創作におけるコミュニケーションのマナーだった。すべてのスタッフ、プレイヤー、ダンサーに対して100％イメージ通りになるように感じていること全てを言うのに、感情の起伏を100％押し殺しているような冷静さがある。「怒ってるんじゃないんだ、『愛』なんだよ」とマイケルが言う場面があるが、この言葉に何の嘘も裏も感じさせないコミュニケーションを彼はずっと全ての人と取り続けている。マイケルのこの能力は異常だ。このような能力を持っているかいないかは、個々の才能がどこまでのスケールの拡がりを持つかに大きく関わる。歌、音楽、ダンスとあらゆる才能に恵まれたマイケルだが、彼を世界最大のポップアーティストにした最大の要因は、このコミュニケーションの才能だった。マイケルは必ずしも孤独な天才ではなかったのだ。(古河)