英国暴動の余波


★8月6日、ロンドン北部トッテナムで勃発し、あっという間にロンドン全域に拡散。
その後恐るべき速さでUK中に飛び火した「過去10年来最大規模の暴動」も今週末でちょうど一週間。

8月10日(水)から警察がようやく本腰を入れ、新たに16000人の特別機動隊を投入&警備を強化したおかげか、
今週末のロンドンは比較的静かだった。

週明け8月15日(月)から「国中の警備状態も通常に戻る(つまり暴動後、新たに投入した機動隊も居なくなる)」らしいので、
我々在英組もまだまだ安心はできないが、、、。


★今週末のイーリング(西ロンドン)では、
(1)8月8日(月)夜、暴徒に頭を強打され数日後死亡した69歳の男性(近所の火災を鎮火しようとしていた地元民らしい。酷いことを、、、)の追悼会が催された。
この事件の容疑者はまだ見つからず、
ロンドン市警は「事件の現場を携帯カメラなどで収めた市民がいるなら至急、警視庁に通告を」と呼びかけている。

★バーミンガムでは、
(2)8月9日(火)、同地での暴動中に地元の商店街を守ろうとしていた地元民の自衛団に暴徒が車を突っ込み、
男性3人が死亡した事件も。
この事件の容疑者としては8月14日現在、少年1人+男1人が逮捕されているが、
「この犯行に関わった人員はもっと多いと思われるので、更に証拠写真や携帯動画を持っている市民は至急、警察へ通告を」と呼びかけている。

★更に、8月8日の夜、ロンドン南部クロイドンの暴動中に男性1人が射殺された事件。
(英警官は銃を持たないので、暴動のどさくさに紛れ発砲したギャングの仕業だと見られている)。
この事件の容疑者としても、現在26歳の男が逮捕されている。

★同じく8月8日の夜、クロイドンで暴徒に襲撃&放火され、親子三代かけて立ち上げてきた庶民の家具屋が全焼した事件についても、
33歳男を含む4人目の容疑者が逮捕されたばかり。

というような状況で、
騒ぎが収まり始めてから数日後の今週末も、全国で数え切れないほどの逮捕者が続出中。
8月14日(日)朝現在、「UK各地で暴動をきっかけに様々な犯行に関わり、逮捕された暴徒の数は2275人」にも及ぶ、という。
今後、逮捕者の数もどんどん膨れ上がるだろう。


筆者が今回の暴動に関わった群集に対し、どうしてもシンパシーを抱けなかったのは、
暴動のターゲットが政府や大手ビジネス機関などの「体制/権力者側」ではなく、
むしろ自分達と同じ「社会の非権力者側/ごく普通の庶民」だった、
という事実も大きい。

当初は正義を掲げたデモが、騒ぎのドサクサに紛れ犯行に及ぶ一部の参加者のせいで、
しばしば「ただの暴徒=犯行集団」化してしまいやすいのも、
かつて70s後期~80s初期の英国で「アンチ・レイシズム」等のデモや政治集会に参加した経験がある筆者は、
身にしみて分っている。
当時のパンクスを主体にした各種デモの最中でも必ずそういうトラブル・メイカーが数人出ていたし、
本気で自分達の抗議をデモンストレーションしたい我々にとっては大迷惑で、
そういう奴らは団結して追い出すようにしていた。

だからこそ、今回の暴動騒ぎで、
自分達本来のプロテストの意義も忘れ、
狂ったように庶民の小売店や家屋を破壊&略奪している若者達をTV画面で見ていて、余計悲しくなるばかりだった。


★今回の暴動の理由の一つとして、「不況からくる格差社会に失望した若年貧困層の怒り」がよく挙げられているが、
本当にそれが理由なら、なぜ国会議事堂や首相官邸前で堂々とデモを行わないのか???


因みに、筆者が最後にデモに参加したのは、2003年の2月ロンドンで行われた当時のブレア政権に対する「反イラク戦」デモ。
あの時はトラファルガー・スクエアなどロンドン各所に全国から約10万人近い群集が集結し、
様々なプラカードを掲げ、国会議事堂前などロンドン中を練り歩いた。
あれほど多くの人数が参加したにも拘わらず、今回のような暴徒騒ぎもほとんどなく、
終始ピースフルなデモだった。

あの後ハイド・パークで参加者全員が集結し「反戦プロテスト打ち上げ会」も行われたわけだが、
あの日わざわざアメリカから渡英し、
参加した米黒人公民権運動活動家=ジェシー・ジャクソン牧師による感動的なスピーチが忘れられない。

トラブルらしいトラブルも起こさなかった当日のデモ参加者達を称え、
我々が社会の弱者であっても団結すればどんなことでも可能だ。希望を捨ててはならない。と励まし、
米黒人公民権運動の先達=キング牧師の、

「Non-Violent resistance, Self-Reliance, and Co-operation」の言葉を引用し、
「暴力は更なる暴力しか繋がらない。決して暴力で訴えてはならない。暴力では何も解決できない」と何度も諭していた。
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