よく言われるように、アメリカには歴史がない。
ヨーロッパの重厚な歳月も、アジアの幽玄な時間も持たない。
たかだか2,3百年前に、初めて世界地図に記された国である。
その拭いがたいコンプレックスが、
箱庭のボール遊びにも詳細なスコアブックを記載し、
記録の保持者をまるでオリンポスの神々のように崇める「歴史の創設」へと導いているのだし、
あるいはまた、歴史のなさを逆説として、一挙に「夢の国」を構築してしまう神経症へと走らせてもいる。
この国の「建国方針」は、それはそれは立派なものだ。
なぜなら、過去のない国だから、未来は何の呵責もなく描けるのは当たり前なのだ。
しかし、それでもそこにあるべき「根拠」のなさが、
「そうではないほかの国」への強い共感欲求となって噴出する。
グローバリゼーションなどという余計なお世話を、
この国は使命感のもとに推進するのだ。
前置きが長くなったけど、要はアメリカの空虚は、
とんでもなく底知れないのである。
だから、アメリカの音楽は、突然、
そのような空虚を丸抱えしてしまうバンドを生んでしまう。
サンフランシスコの2人組、GIRLSは、そういうものとして聴こえて仕方がなかった。
享楽的なサウンドにインサートされた「泣きたくないんだ」というフレーズは、
とっくの昔に涙など枯れ果てた場所から歌われている。