ビートルズと歩んだ男

ビートルズと歩んだ男

ビートルズを語る本はたくさんあるけれど、中でも面白いのはいっしょにその当時を生きた人の証言だ。
この本『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』の著者であるジェフ・エメリックは、EMIスタジオ(のちにアビイ・ロードと呼ばれるあのスタジオのことだ)のエンジニアとして、ビートルズのサウンドにジョージ・マーティンとともに深く関わってきた人物だ。

驚くのはそのめぐり合わせで、彼はなんと15歳のときにこのスタジオの門を叩き、ちょうどビートルズの最初のセッションを見学している。それからは、『リボルバー』、『サージェント・ペパーズ』の革新的な音作りに多大な貢献を果たし(そのときのジェフは20~21歳だ!)、『アビイ・ロード』のビートルズ最後のセッションを見届け、その後も、アップル・スタジオの設立や、数々の他ミュージシャンとの傑作(エルヴィス・コステロとの『インペリアル・ベッドルーム』!)、ポール・マッカートニーの『バンド・オン・ザ・ラン』や「夢の旅人」、『タッグ・オブ・ウォー』(ということは、ジョン・レノンの悲劇があったあの瞬間、ポールのそばにいたことになる)を手がけ、そして90年代には、ジョン・レノンの遺していた楽曲を3人のビートルが再び集まって完成させた「Free As A Bird」、「Real Love」に立ち会うという、「ザ・ビートルズ・モーメント」のほぼすべての場面の当事者だったということになる。

ビートルズの薀蓄はそれこそ掃いて捨てるほどあるけれど、彼が語るなぜ「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の途中に目覚まし時計のベルが鳴ったのかといったエピソードには、なにゆえそのようなことが起きたのか、当時のありありとした情景と状況が合わせて語られているのでとてもわくわくさせられる。ありがちな感想だけど、ほんとうにそのレコーディング現場にいるような気になる。

けれど、それはどういうことか。
それは、ロックが生まれだす、最上にして究極の瞬間に居合わせるということである。
もう何度目だろうこれ読むの。索引までいれて600ページ。

数年前に発行されたこの本は、今年になって新装版として再刊行されている。
しかも、1000円も安くなって!
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