新作『アウェイクン、マイ・ラヴ！』を去年の12月に発売したばかりのチャイルディッシュ・ガンビーノだが、俳優ドナルド・グローヴァーとして活躍しているのを知ってる人も多いはず。知らなかった人はまだ遅くないので、絶対覚えておいて～。
最近では『オデッセイ』に出演し、科学者を演じていた。いかにもナードというキャラで難題を解く役。さらに、2018年公開予定の『スター・ウォーズ』のスピンオフでハン・ソロを描いた作品で、若きランド・カルリジアンを演じることになっている。監督は、『LEGOムービー』のクリス・ミラーとフィル・ロード。若きハン・ソロは、アルデン・エーレンライク。『ゲーム・オブ・スローンズ』で大人気のエミリア・クラークも出演するので超楽しみだ。
実はそんな彼は、日本では知られていないかもしれないが、去年アメリカで、『アトランタ』というTVドラマの脚本、監督、主演を務めた。これがめちゃくちゃ面白かったのだ！！！ そして先日発表されたばかりのゴールデン・グローブ賞で、なんとコメディ／ミュージカル部門での最優秀TV番組賞と、主演男優賞を受賞した！！
個人的にも、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』と並び、去年大好きだったTV番組のひとつだったし、批評家からも大絶賛されたが、ゴールデン・グローブ賞はあまりカッティング・エッジでクールなものは賞されないことが多いので、まさか獲るとは思っていなかった。感動した！
『アトランタ』は、アトランタを舞台に、グローヴァー演じる仕事をクビになった冴えない主人公が、子供も生まれてお金もなくて困ったため、自分のいとこのラッパーを何とか売り出しマネージャーになる話。しかし、これが『エンパイア 成功の代償』のようなベタでイケイケな内容ではなくて、どうしようもなく途方に暮れた感じがあってリアルだし、コメディなので笑えるんだけど、どっか冷めてもいたりするのだ。めちゃくちゃクールな番組で、『ストレンジャー・シングス』同様、感性の鋭い若いクリエーターが登場した！と明らかに分かる番組。
黒人の生活をここまでリアルに捉えた番組もないと評価されている。あくまでアトランタ発という地元に拘るところとか、チャンス・ザ・ラッパーにも通じるところがあるのだけど、なんとチャンスが最近、ふたりでコラボすることをにおわせるインスタグラムをアップしていた！！
ポジティブなエネルギーを発するカッコ良いふたりだが、グローヴァーが受賞した後のゴールデン・グローブ賞の記者会見でのコメントがあまりに素敵だった。この『アトランタ』という番組を作ったのは、「人間の持つ魔法を信じなくてはいけないから」だと答えているのだ。
記者会見での映像はこちら（Variety誌より）
Donald Glover comments on current events, "I think a lot of the s*** that's happening now is b*******." #GoldenGlobes pic.twitter.com/o0ooCyKDw0
— Variety (@Variety) 2017年1月9日
「俺達は今ものすごく分裂した時代を生きている。そして、メリル・ストリープが言っていたように、俺達全員がすごく大きな責任を担っていると思うんだ。
それで、例えば、俺は子供の頃、もうサンタクロースはウソだって知っていたけど、でもそれを知らない友達がたくさんいるから、学校に行っても、ウソだって言っちゃいけない責任があると分かっていた。なぜ言っちゃいけないのかも分かっていたんだ。
それは喜びのためだ。人間の喜びというのは、ものすごく大事だから。それはコンピューターから得られるものではない。それは信じる心から来るものなんだ。演じること、音楽を作ること、それは何かを信じる心からできている。俺達は子供の頃自分達がどれだけイノセントで美しかったのか忘れてしまうものだ。だから、その魔法を再び生みだすということは、俺達の責任だと思うんだ。今、マジでクソみたいなことがたくさん起きていると思うから」
また彼は受賞スピーチで、地元アトランタのMigosの“Bad and Boujee”が最高で、インスピレーションになったと感謝の意を表したのだけど、その効果で翌日この曲は全米シングルチャートのHOT100の1位になってしまった（笑）。
グローヴァーは、Migosが好きな理由を、以下のように語った。
「彼らはアトランタにおいては、俺達の世代のビートルズと言えると思うんだけど、あまりに知られていないと思うから。俺は、U2の世代として育って来たけど、今はそれとはまったく違う世代に育った世代が誕生してきたと思うんだよね。それにあの曲ただマジで最高なんだ。セックスする時にあれ以上良い曲もないんだ」
また、『スター・ウォーズ』のスピンオフで、ランド・カルリジアンを演じることについて、
「自分が最初に買ったおもちゃがランドだった。期待に応えたいとは思うけど、実際に出来ることと言ったら、精一杯頑張るだけだからね。だから可能な限り楽しみたいと思ってる。監督のクリスもフィルは最高だし、ハンを演じる俳優も大好きだし、それにエミリア・クラークもいるわけだから、絶対楽しくなるよ。だからみんなで楽しみたいと思ってるんだ」と話している。
ひと世代前の大人気黒人コメディアン、クリス・ロックが最近「俺達の時代はTVシリーズを作らせてもらえる機会もなかったし、観客もいなかったと思う。『アトランタ』の成功は時代の変化を象徴している」と言ったとゴールデン・グローブ賞の記者会見の中でも語られていた。オバマの任期は終ってしまったけど、彼から良いインスピレーションを受けた世代がこれから頑張ってくれることを期待したい。黒人が監督、脚本、主演した映画『ムーンライト』も映画のドラマ部門で作品賞を受賞したし、今年のゴールデン・グローブの結果は少なくとも「白すぎるオスカー」とは違うものだったし。
チャイルディッシュ・ガンビーノとしての最新作からの曲“Me and Your Mama”
