JAY-Zが最新作『4:44』を発表! 浮気を謝罪、カニエをディス?!、プリンス、『ラ・ラ・ランド』!、人種差別の根深い問題などを語る。

JAY-Zが最新作『4:44』を発表! 浮気を謝罪、カニエをディス?!、プリンス、『ラ・ラ・ランド』!、人種差別の根深い問題などを語る。

JAY-Zの新作『4:44』が、6月30日金曜日の0時にとうとう発表され、この夏最大と言えるような大騒ぎとなった。

早速聴いたのだが、まず、アルバム全体を通して浮気したことをビヨンセに謝罪しているし、カニエ・ウェストをディスったり、ソランジュへの言及も出て来るし、更にはプリンスの意志を無視して金儲けに走るプリンス・エステートを批判している。
また、オスカーで起きた『ムーンライト』受賞時のミスについて語るなど1曲1曲が濃厚で、各メディア、それぞれの曲について語りまくっている。

1曲目は、さっそく”Kill Jay Z”と、かつての自分を殺すかのような内容。ちなみに、JAY-Zは、今回からハイフンを復活させ、全部大文字表記となった。なので、1曲目の表記は過去の自分への反省から始まるという意味だと思う。

そこで、まずカニエのディスがある。「20ミリオンドル渡したのに、そのお返しが20分間のディスとは」「人のことを狂ってると言うけど、おかしいのはお前だ」とラップしている。恐らく、カニエのTidalとの契約不履行、カニエがライブで20分間JAY-Zをディスったことへの返答だと思われる。さらにその曲では、2014年のMETパーティの後で、ソランジュがホテルのエレベーターでJAY-Zを蹴った有名な映像についても語っている。「悪かったのは自分だと言わなくてはいけないと分かっていながらも、ソランジュをけしかけてしまった/世界で一番カッコいい女性を失うところだった/エリック・ベネイ(浮気してハル・ベリーと離婚)のように」と、ソランジュがJAY-Zを蹴ったのは、自分が浮気したからだったと認めている。

さらに“4:44”では子ども達が自分の浮気を理解して自分を同じように見てくれなくなったら「すべての恥を抱えて死ぬだろう」とも。JAY-Z曰く、最初の曲で「自分のエゴとの闘い、エゴを捨ててこそ初めて正直に自分を曝け出した会話ができるということを語っている」と。

また、”Smile”では母とコラボし、その中で母がレズビアンであることをカムアウトしているし、さらに、”Legacy”においては、彼の父親側の家系にはびこる暴力や闇について打ち明けている。

彼個人のエゴやデーモンと向き合った曲の他に社会的な問題を指摘する曲もある。例えば、”Moonlight”では、「俺達はラ・ラ・ランドで行き止まり/俺達が勝っても、結局は負けるんだ」と語り、今年のオスカーで、『ムーンライト』が作品賞を受賞し本来なら黒人の映画監督にとっては最高の栄誉と言える瞬間を、先に『ラ・ラ・ランド』にオスカーが手渡されてしまった皮肉を言及している。

JAY-Zが最新作『4:44』を発表! 浮気を謝罪、カニエをディス?!、プリンス、『ラ・ラ・ランド』!、人種差別の根深い問題などを語る。

TidalではすでにMVが公開されている”The Story of O.J.”も強烈な内容だ。これは黒人をステレオタイプに描いていて人種差別だと指摘されている絵本『ちびくろサンボ』(原題”The Story of Little Black Sambo”)を下敷きにしたアニメ。JAY-Zは、Jayboというアニメのキャラクターを演じて、黒人の社会的なステレオタイプを指摘している。JAY-Z曰く「社会的に固定概念がある中で、俺達がいかにしてそれを打破して前進できるのか、について描いた曲。そして、自分が成功をした時に、それをいかに金以上の何か大きなものに変えることができるのかについて描いた曲」だと語っている。

フランク・オーシャンとのコラボ曲”Caught Their Eyes”では、プリンス・エステートがプリンスの遺言がなかったことを良いことに、プリンスの意志に逆らい金儲けに走っていることを批判している。 

発表されるまでアルバムなのか、ビヨンセの『レモネード』のようなビジュアル・アルバムになるのか分からなかったのだが、結局は10曲収録のアルバムだった。アメリカのメディアは、「彼の作品の中でも最もパーソナルで、政治的な作品である」とか、現在47歳のJAY-Zがラッパーとして「大人の表現をした」と高評価をしている。
NYタイムズは「自分と同じくらい有名な妻が、あれだけパーソナルで、音楽的にも革命的で、政治的な作品を作った後では、かつてと同じような作品を作ることは選択肢にはない。発展するか、消えるかしかない。新たな人生を見付けるか、アーティストとしての死を認めるしかない」、「究極に精神的なカタルシスか、または究極に親密な作品を作るしかカムバックする意味はない」とまで書いている。そしてそんな状況に追い込まれ、「その両方をやってのけた」と賞賛。しかもそれをこれまで通り「氷のようにクールにやってのけた」と書いている。
https://www.nytimes.com/2017/07/02/arts/music/jay-z-4-44-review.html

ケンドリック・ラマーも感動のツイートをしていた。

また、これまでJAY-Zの作品は発売日に全部買っていたというマーク・ロンソンは、発売日にTidalに加入したのに聴けなかったと悲しんで以下のツイートをしている。6月26日までにTidalに加入していないと聴けなかったようだ。


収録されたのは以下全10曲。プロデューサーは全曲No. I.D.。

1. Kill Jay Z
2. The Story of O.J.
3. Smile featuring Gloria Carter
4. Caught Their Eyes featuring Frank Ocean
5. 4:44
6. Family Feud featuring Beyonce
7. Bam featuring Damian Marley
8. Moonlight
9. Marcy Me
10. Legacy

現在は、TidalかSprintの顧客しか聴けないが、噂によると1週間後にはアップル・ミュージックでストリーミングが開始するそう。また、CDの発売もあると言われている。
すでに映像で発表されているAdnis(JAY-Zの父親の名前)がそこに収録されるという噂もあり、またプロデューサーのNo.I.D.は、ジェームス・ブレイクがプロデュースした曲もあると言っていて、それもボーナストラックとして発表されると言われている。
http://www.thefader.com/2017/07/01/no-i-d-jay-z-james-blake-collaboration

JAY-Z本人が全曲解説しているし、Tidalでは、インスピレーションとなった曲なども発表されている。日本でも聴けることが分かったら、追ってレポートする予定。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする