アーケイド・ファイア、日本の救急車音に始まる新曲“Signs of Life”を発表、MVも公開。新作に掲げるメッセージを予想。

アーケイド・ファイア、日本の救急車音に始まる新曲“Signs of Life”を発表、MVも公開。新作に掲げるメッセージを予想。

アーケイド・ファイアが、最新作『エヴリシング・ナウ』から3曲目となるシングル“Signs of Life”を発表した。すでに各ストリーミングサイトで聴けるし、iTunesなどでも買える。そこで聴いてもらえば分かる通り、この曲は日本の救急車音で始まっている。来日時に彼らが自ら録音したものなのか?はちょっと不明だが。
http://smarturl.it/AFSignsOfLife

さらにこの曲のMVも発表された。こちら。ここでは救急車はカットされている。


この曲のタイトルは「生きている証」という意味で、詞の内容としては、「クール・キッズ」が、「生きている証を探している」、しかし「生きている証」が見つけられなくて、同じことを繰り返してしまう、というものだ。
また「愛は難しいけど、セックスは簡単」という歌詞も印象的で、このアルバム全体で彼らが恐らく言わんとしているテーマのひとつが描かれているように思う。それは、「すべては今」目の前にあるのに、本当に大事なもの、愛や真実が見付けられないでいる僕たちについてだ。

この曲の良いところは、その非常に重いと言えるテーマをダンスミュージックに仕上げることで少し軽やかにしているところだ。また、MVではそれがさらに強調されていて、ウェス・アンダーソンの映画に出て来そうな主人公達が「生きている証」を探している様がオフ・ビートに描かれている。監督をしたのは、Mayer/Leyva。

ウィン・バトラーはアルバムを『すべてを今』という意味のタイトルにしたことについてBBCで語っていた。

「今何もかもが、”すべてを今”という世の中になっている。すべての出来事の全ての面が何かで包囲されていて、その中にリアルなものもあれば、フェイクなものもある。何かを売りつけているようなものもあれば、核心を突いているものもある。すべての瞬間に、異なる何千もの屈折したものが生み出されているように思うんだ。つまり、この作品ではその欠点も、栄光も、すべてをひっくるめて、今を生きる経験を捉えようとした」

既に公開されているMVの”Creature Comfort”には、「公式/公式」MVが存在する。こちら。

これもウィン・バトラーの発言をそのまま表現してみせたような内容だ。昔よくあったトリビアが出て来るポップアップビデオになっていて、バンドのパフォーマンス(真実)が見たいのに、嘘か本当か分からない情報がスクリーンを覆っている。例えば、「ウィン・バトラーはこのパフォーマンスを自分の中で盛り上げるために『ロッキー3』の台詞をイヤフォンから聴いている」とか。

この曲も映像の下に流れている歌詞を読まないと、ちょっと怪しくしかし軽やかなダンスチューンに聴こえる。しかし歌われている歌詞は、ウィン・バトラーがこれまでに書いた歌詞の中でも最も悲しいとすら言える内容だ。というのも、ここでは自殺願望が歌われていて、有名になれないなら、その苦痛から解放して欲しい、と歌うのだ。
これは、本当に有名になりたいという願望について言っているようにも思えるし、例えばインスタグラムやスナップチャットで友達から人気を獲得したい、ということについて言っているようにも思える。そこで人気が出ないなら、死にたいという今の若者の現象を指摘しているのだ。

しかし、悲しいのはそれではなくて、何が欲しいのか分からなくなり、とにかく苦痛から解放して欲しいと死んでしまった友達に対して、この歌詞の主人公のひとりが、「苦痛から解放されたりしない/彼女は僕の友達だったんだから」と歌うことだ。つまり、この死んでしまった女性は、誰が自分の友達なのかも見えなくなって死んでしまうわけだが、本当の友達がいて悲しんでいるという物語なのだ。

最初に発表された”Everything Now”では、「すべてが今なければ生きていけない」僕らは「もう元には戻れない」と歌っている。

この3曲を聴くと、『ザ・サバーブス』に描かれていた思春期のキッズ達の途方に暮れたような焦り、絶望や喪失が、さらに突き詰められた世界で描かれているように思う。アーケイド・ファイアが、”Everything Now”のMVで立つ砂漠は、架空のディストピアにも見えるし、現実世界にも見える。

バンドは「Everything Now」というツイートのアカウントを作り、フェイクニュースを配信したりしている。今の社会で、とりわけ、アメリカの大統領が、CNNに「フェイク・ニュース」と言いたいがために、かつてプロレスのTV中継に出演した映像を加工し作成した、CNNのお面を被った相手を倒す映像をツイートするようなこの現実世界で、何とも言えない皮肉となっている。
https://twitter.com/EverythingNowCo

新作の発売は、7月28日。アルバムのプロデュースは、ダフト・パンクのトーマ・バンガルテル、パルプのスティーヴ・マッキー、『ザ・サバーブス』はじめ、彼らの作品を3作プロデュースしたマーカス・ドラヴスだ。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/arcadefire/
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