ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》

  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by TIFF

    pic by TIFF

  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by Jemal Countess/WireImage/Getty for TIFF

    pic by Jemal Countess/WireImage/Getty for TIFF

  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by George Pimentel/Getty Images TIFF

    pic by George Pimentel/Getty Images TIFF

  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by TIFF
  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by Jemal Countess/WireImage/Getty for TIFF
  • ヴィゴ・モーテンセン主演の最新作がトロント映画祭でサプライズの大賞!オスカー候補に急上昇。《トロント映画祭3》 - pic by George Pimentel/Getty Images TIFF

トロント映画祭で大賞にあたる観客賞を獲ると、毎年そのままオスカー候補にまっしぐらなので、オスカーの前哨戦と言われているこの映画祭。

今年の観客賞はなんと、ヴィゴ・モーテンセンと『ムーンライト』でオスカーを受賞したマハーシャラ・アリが主演、ピーター・ファレリーが監督の『Green Book』が選ばれた!個人的にも嬉しい!

予告編はこちら。
https://youtu.be/QkZxoko_HC0

この作品は1962年のアメリカを舞台にした事実に基づいた物語で、ジャマイカ系アメリカ人の有名な天才クラッシックのピアニスト、ドン・シャーリー(アリ)が南部をツアーするにあたり、NYのナイトクラブのバウンサーであるイタリア系のアメリカ人のトニー・リップ(モーテンセン)が運転手を務める話。育ちも、人種も、階級も、教育も違う2人の珍道中が繰り広げられるのだ。

大事な背景は、当時のアメリカ南部はジム・クロウ法が適用されていて、他の場所では運転手でも高級ホテルに泊まれるのに、南部だとピアニストのシャーリーは黒人専用の寂れたホテルに泊まらなくてはいけなかったりすること。シャーリーが、演奏のために招待された高級レストランで自らは食事をさせてもらえないというようなことに遭遇するのだ。

“グリーン・ブック”というのは、当時黒人が南部を旅する時のガイドブックで、どの州では何が禁止されていて、どこに泊まれるかなどが書かれている。

トニーは、この旅が始まる前は人種差別主義者でもあるのだが、この旅を通して変わっていく。同時にシャーリーは子供の頃からその才能を認められて、世間とは隔離された世界で孤独に生きてきたのだが、この旅とトニーとの関わりを通してリアルな黒人の文化や労働階級の人々の生活を学ぶ。

映画の見所は何より、この役のために体重を増やしてとにかく食べ続け、タバコを吸い続ける運転手を演じたヴィゴがあまりに魅力的でかつ思い切り笑えること。そのモデルだった人物の息子さんが脚本に参加しているのだが、ヴィゴが食べまくるシーンを撮影している時に泣き出してしまったそうだ。「あまりに父に似ている」と。

この映画を観ていると、改めてヴィゴにできない役ってないのではないかと思うくらい。『イースタン・プロミス』から、『ロード・オブ・ザ・リング』、『ザ・ロード』、『はじまりへの旅』などなど、彼の演じてきた役の幅の広さ、しかもその完璧な演技について考えずにいられなかった。

また、この映画は『ドライビング・Missデイジー』の2018年版とも言え、下手すると、深みのない単なる“良い話”にもなり得たと思うのだが、それが絶妙なバランスで交わされていて、好きにならずにいらないような作品に仕上がってるのが素晴らしいところ。だから、多くの人に受け入れられた観客賞を受賞するのは分かる。

それは、当然監督がファレリーであることも大いに関係している。ご存知のように彼は、ファレリー兄弟としてこれまでに『ジム・キャリーはMr.ダマー』から、『メリーに首ったけ』、『愛しのローズマリー』などを作ってきたコメディの監督だ。

しかしどの作品にも、心があったと思うのだ。今作はコメディとは言い切れないのだが、とにかくヴィゴの笑えるシーンが満載だし、笑えることで、むずかゆくなるようなありがちな”良い話”になっていない。

さらに、ピアニスト演じるアリのどこか世間離れしたような演技も最高だし、ピアノの演奏シーンが素晴らしい。そこで演奏される曲も美しくパワフルで、サントラを買いたいとも思うくらい。

ヴィゴは記者会見で、「“良い映画”であることは何も悪いことじゃない。楽しむことから、笑う中から、何か画期的なアイディアを思いついたりするものだから」と語っていた。

またテーマについてにも、「ここには当然人種差別、階級問題など、今にも通じる物語が描かれているのだけど、それを今を舞台にせず、1960年代を舞台にすることで、僕らがより受け入れられるものになっているし、その歴史を思う時、より深く考えらえるものになっていると思う」と。

個人的にも、それがこの作品が好きだった理由だ。というのも、今年のトロント映画祭では私が観た映画の90%が今を何らかの形で反映していて、それを10日間も観続けると、さすがにヘビーすぎたのだ。この作品は今を映しながらも、それを誰もが映画として楽しめるレベルに持って行っているのが素晴らしい。

先述の通りトロント映画祭で観客賞を獲ると、オスカーに直行すると言われてる。他の映画祭と違い、審査員が決めるのではなくて、実際にお金を払ってチケットを買って観た観客が決めるからだと思うのだが。

去年は、『スリー・ビルボード』が観客賞を獲り、オスカーではなんと7部門にノミネート。フランシス・マクドードマンドとサム・ロックウェルが見事オスカーを受賞した。その前は、『ラ・ラ・ランド』、『ルーム』、『それでも夜は明ける』、『英国王のスピーチ』、『スラムドッグ$ミリオネア』などなど。ノミネートされるだけではなく、必ず何かしら受賞している。

現時点では、一気にこの作品が作品賞候補に入っている。日本では、オスカー後の来年3月公開が予定されているようだ。引き続き要注目!!
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする