ザ・ウィークエンドのグラミー賞ノミネーションがゼロだった原因とされる「秘密委員会」が廃止、という衝撃の発表。ザ・ウィークエンドがそれを受けて、グラミー賞は「それでも腐敗している」とコメント

ザ・ウィークエンドのグラミー賞ノミネーションがゼロだった原因とされる「秘密委員会」が廃止、という衝撃の発表。ザ・ウィークエンドがそれを受けて、グラミー賞は「それでも腐敗している」とコメント

ザ・ウィークエンドの『アフター・アワーズ』は、2020年に最も売れ、評価も高かったアルバムの1枚であり、“Blinding Lights”は、史上最高にヒットした曲の1曲であった。それにもかかわらず、今年のグラミー賞のノミネーションはゼロというあまりに明らかな不公平が起き、世界に衝撃が走った。

ザ・ウィークエンドは、それを受けて、グラミー賞の最終ノミネーションに大きな影響を与える「秘密委員会」の存在を抗議したばかりか、今後は、作品をグラミー賞に提出しないと発表した。

「秘密委員会」は、これまでも長年その存在が問題視されてきたが、今回、なんとその批判を受けて、「秘密委員会」が廃止されることが発表されたのだ。これは驚きの決断だ。グラミー賞を決定するレコーディング・アカデミーより5月1日付けでプレスリリースが届いた。

そのプレスリリースによると、この決定は「グラミー賞の選考に透明性と公平をもたらすため」のものだと書かれている。つまりこれまでは不透明で公平ではなかったと認めているようなもの?

ザ・ウィークエンドは、ノミネーションがゼロだった際すぐにこうツイートしていた。「グラミー賞はいまだ崩壊したままだ。僕と僕のファンと音楽産業のために、透明性を要求する」と。つまり選考過程を隠さずに明確にして欲しいということ。
また「これは、僕だけの問題ではない。グラミー賞が人種差別的かどうかと言ったら、その答えは、この62回で黒人アーティストが10人しかアルバム賞を取っていないことにあると思う」とも答えて、長年続く人種差別にも抗議していた。


今回なんと本当に「秘密委員会」が廃止されることになったことに対して、ザ・ウィークエンドがすでにコメントを発表している。


「グラミー賞とアーティスト間の信頼関係は長年にわたり崩壊している。なので、ここで勝利宣言をするのは、賢明とは言えない」


今後も自分の作品はグラミー賞には提出しないという。

「音楽産業も一般の人たちも、グラミー賞の透明性あるシステムが本当に機能しているのかを見るまでは、喜ぶのは早いと思う。だけど、これは重要な出発点ではある」

「ただ僕は、グラミー賞には現時点では興味がない。とりわけ、これまで長い間組織が腐敗していたことを自分たちで認めているわけだからね。今後も作品を提出することはないよ」


彼のマネージャーであるWassim “Sal” Slaibyも、「声を上げる人がいなかったら、変化も起きなかったはずだ。だから僕は、エイベル(ザ・ウィークエンド)が、自分が信じることのために立ち上がったことを誇りに思う。ノミネートされなかった時はかなりショックだったけど、今はそれが明確に見える。自分たちの信じることのために立ち上がったことを嬉しく思う」とコメントしている。

ちなみに、グラミー賞は、今回この「秘密委員会」の廃止は決定したものの、ザ・ウィークエンドのノミネーションがゼロだったのがこの委員会のせいだったとは、公式に認めていない。

それではこの「秘密委員会」が何なのかについては、ロッキング・オンの5月号のコレポンのページに書いているので機会があったら読んで欲しいです。
が、簡単に言うと、グラミー賞は、基本的には全84部門を1100人の会員で投票し各20組のアーティストまで決める。

しかし、その後に、15~30人で結成された「秘密委員会」が登場し、会員が選んだ20組から最終的にノミネートされる各部門基本5組のアーティストを選んでしまうのだ。「秘密委員会」というだけに、その会員が誰なのかは明かされてない。それがすでに「不透明」だ。
しかも、彼らが決めるのは、全84部門中主要4部門であるアルバム賞、レコード賞、楽曲賞、新人賞を含むなんと全72部門。つまりほぼ全てを決めてしまうと言える。今回の廃止により、ほぼ全ての部門を全会員の投票で決めるようになる。

元々は、単に売れた作品だけではなくて、質の高い重要なアルバムを見逃さないために、この「秘密委員会」が設定された。しかし蓋を開けてみれば、今回のように売れてもいるし、評価も高いのにノミネーションがゼロということが起きる。

その代わりに、売れてもいないし評価も高くないのに、なぜかザ・ウィークエンドを押し除けてノミネートされているアーティストがいる。そういう誰もが首をひねるような作品がノミネートされるということが、あまりにあからさまに長い間起きてきた。つまり、「秘密委員会」のメンバーは、なんらかの理由で自分が贔屓する作品や、アーティストを最終ノミネートする不公平が起きてきたのだ。

「秘密委員会」の存在は長年知られていたが、2020年のグラミー賞で授賞式直前に休職を命じられた初の女性会長デボラ・デューガンが、その過程が不公平であるということを公にした。例えば、それによってエド・シーランや、アリアナ・グランデなどが故意に外されたことなども明らかになった。

以前よりBLMや#Metooムーブメントを受けて、黒人差別、女性差別が社会的な問題となる中、今回ザ・ウィークエンドが抗議し、批判されたことや、またコロナ禍で行われ視聴率が劇的に低迷したこと。
とりわけ驚いたのは、18歳から49歳の98%がグラミー賞を観なかったのだ! 嘘がバレ始めている。つまり、グラミー賞のような年配の白人男性が特権を持つ古い体制は存続するためには、もう変わるしかないところまで追い込まれているということだと思う。ザ・ウィークエンドの抗議がその大きな引き金となったわけだ(拍手!)。

今年はアカデミー賞も、最後に絶対主演男優賞を取ると言われていたチャドウィック・ボーズマンが取らずに、アンソニー・ホプキンスが取るという、個人的には言葉を失うような衝撃の幕引きもあった。

明らかな黒人差別の旧体制が醜く残る場所もあるし、そして今一番ピンチなのは、ゴールデングローブ賞を決めるハリウッド外国人記者協会だ。黒人会員が1人もいないことが発覚し、大批判されている。黒人会員を至急入れると言ったものの、組織内で人種差別を指導するために雇われた会社と、ダメージ・コントロールをするために雇われた会社が、同時に辞めている。手に負えない組織だからだ。もし指定の日時までに改革が行われなかったら、存続すら危ぶまれている。



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ザ・ウィークエンドのグラミー賞ノミネーションがゼロだった原因とされる「秘密委員会」が廃止、という衝撃の発表。ザ・ウィークエンドがそれを受けて、グラミー賞は「それでも腐敗している」とコメント - 『rockin'on』2021年6月号『rockin'on』2021年6月号
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