NYでオミクロン株感染拡大。ザ・ストロークスは年越しライブを急遽キャンセル。デヴィッド・バーンは続行。2021年の終わりは結局振り出しに戻ったのか?!

pic by AKEMI NAKAMURA

クリスマス・イブのNY州では、コロナ感染者数がなんと史上最高の49,708人を記録した。

これはオミクロン株の感染拡大が報じられて、クリスマス休暇で実家に帰る前に史上最高の40万人が検査を受けたためでもあったが、アメリカ全土においても、その前の週に比べて感染者数が一気に48%増加した。NYはとりわけ多かったため、少しパニック気味にもなり、これから年末に予定されていたライブが次々にキャンセル、延期となった。

1)まずザ・ストロークスの年越しライブが延期。

キャンセルしているバンドは、オミクロン株があまりに急に感染拡大したことでゆっくりと研究結果を待つ時間がないので、念のためキャンセル、もしくは延期するしかなかったのだと思う。ザ・キュア(治療)の写真をポストしているのがザ・ストロークスらしいけど。本当に無念という気持ちがひしひしと伝わってくる。


「何て言えばいいかな…..ライブを延期します。

ブルックリンでみんなと年越しライブをするのをすごく楽しみにしていたのに、
オミクロン株にその計画が阻止されてしまった。バークレイズ・センターでのライブを延期します」

「みんなに安全で健康でいて欲しいし、みんなと一緒に新年を祝うのを楽しみにしている。当初の計画より少し遅くなってしまうけど」

ジュリアン・カサブランカスも、残念な気持ちが抑えられないのか2回投稿していた。

国の対策がはっきりとしていないからだと反発もしつつ、
「とにかく、みんな安全で、願わくばマジカルなホリデーを友達や愛する人たちと過ごせますように。2022年になったら、暴力なしの革命的なパーティをしよう」
とコメントしている。

2)パティ・スミスも恒例の誕生日ライブを延期。
パティ・スミスは毎年誕生日の12月30日と年越しにライブを行っていたけど、4日前に、3回行う予定だったライブを2月に延期と発表した。

「すごく残念だけど、でも最新のオミクロン株は感染しやすくて、自分の周りにも感染している人たちがいる。中には酷くなっている人もいるし、そうでもない人もいる。ただすごく感染しやすいことは間違いないから、観客や出演者、スタッフのことを心配しなくてはいけないと思った。本当にごめんなさい。もちろん私もすごくがっかりしている。でも延期したライブを楽しみにしているし、みんなと一緒に75歳を祝えるのを楽しみにしている」


3)フィッシュも恒例の年越しライブを延期。


フィッシュも毎年NYで年越しライブを行っているが、NYでのコロナ患者数が急増したため、ライブを4月に延期と発表。フィッシュのライブには、毎年NY以外の各地からファンが集まって来ることをとりわけ懸念しての決断ということ。代わりに、大晦日に観客なしでライブを行い、それをバンドのYouTubeチャンネルで無料配信するそうだ。

4)デヴィッド・バーンは、ブロードウェイで行っている『アメリカン・ユートピア』を続行。

デヴィッド・バーンは、ブロードウェイで大ヒット中の『アメリカン・ユートピア』に出演中だ。ブロードウェイは、ブルース・スプリングスティーンがまず公演を行い、9月に再開されたものの、割と苦戦している。観光客が来ないので興行成績が伸びないばかりか、出演者やスタッフがコロナに感染してしまい、急遽キャンセルということがよく起きている。今回もオミクロン株が感染拡大を受けて、『ハミルトン』などの超人気ミュージカルも一時的にキャンセルになったり、ヒュー・ジャックマンもコロナ陽性になり、出演しているミュージカルを何日間かキャンセルした。中には、完全に終了してしまったミュージカルなどもある。

『アメリカン・ユートピア』も、出演者とスタッフが感染してしまったそうなのだけど、なんとデヴィッド・バーンは、「The Show Must Go On」とその逆境に負けず続行を発表。

感染したメンバーの代わりに代役のメンバーが出演するも、人数が足りなくて、完璧にはこれまで通りのショーは行えないのだと思う。なので、「アンプラグド」にして、これまでの『アメリカン・ユートピア』の曲に、トーキング・ヘッズやソロの曲を追加して、「一生に一度のライブにする」と宣言。コロナに感染したメンバーは、症状があるわけではないので、政府のガイドラインに従い自宅で隔離中で、1、2週間で復帰する予定。その間をキャンセルするのではなくて、その逆境を新たな機会として、これまでやったことのないことに挑戦しよう、というものだ。なので、今しか観られない超特別なショーが行われる。今急いでアレンジし直して、リハーサルしている。超前向きだ。




というわけで、ミュージシャンによって対処も様々だ。

しかしせっかく前進してきたと思ったのに年末になってこのパニックで、2021年は結局振り出しに戻って終わりかとかなり落ち込んでいる。そういう歌を歌っていたバンド誰だっけ?とこの数日ずっと考えていた。

レディオヘッドの”Where I End And You Begin”か?


スマッシング・パンプキンズの”The Beginning is The End Is The Beginning”か?


NINの “Every Day is Exactly the Same”か?


いや、オリヴィア・ロドリゴの”deja vu”か!



2021年前半の記憶は真っ白。後半になってワクチン接種が開始。急に9月になってライブが再開したが、それと同時にデルタ株の感染拡大。ニール・ヤングのように、危険だからとライブを中止したアーティストもいたが、多くは18ヶ月もゼロだったライブを絶対に元に戻したいと、ワクチン接種と検査陰性を義務付けてライブ、フェスを再開。もちろんそれでも完璧ではなかったが、なんとか前進してきたと思ったところだった。なのに年の終わりに、またオミクロン株で次々とライブがキャンセル。来年は、アデルに、ビリー・アイリッシュなど、大物の単独ツアーが控えているのに!

しかし政府は、これは振り出しに戻ったわけではないと強調している。1年前に比べて今の方がワクチンはあるし、ブースターもあるし、検査も行き届いている。なので、NYでも1月3日に開始する学校は閉鎖しないと市長が宣言していた。すでに5歳以上の子供たちはワクチン接種をしているし、検査の数を2倍に増やすなどの対応を強化するとのこと。

とりあえず2021年、振り出しに戻ったわけではなさそうだ。



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