U2が、新録音、新解釈でU2名曲40曲収録の新作『ソングス・オブ・サレンダー』を3月17日発売。ボノはNYで11回公演。


U2が、新録音、新解釈で、U2の名曲40曲を収録した新作『ソングス・オブ・サレンダー』を3月17日に発売すると発表した。

またボノは、このアルバムと兄弟的なタイトルが付いた自伝本『Surrender: 40 Songs, One Story』を発売したばかりで、NYではなんと11回のレジデンシー公演も行う。さらにバンドは、アメリカで文化人に贈られる最高の賞、ケネディ・センター名誉賞も去年の年末に受賞したばかりでもある。

1)『ソングス・オブ・サレンダー』

3月17日に発売される新作の予告編が、”Beautiful Day”とともに公開されている。

さらに”Pride (In The Name of Love)”の音源も公開された。

この新作は、ジ・エッジがキュレートしてプロデュースしたもの。全曲新録音で、新解釈。場合によっては詞も新たに書かれているそう。40曲は、メンバーそれぞれの名のもとに4枚のアルバムになっている。

それぞれのトラックリストは以下の通り。

Side 1 – The Edge
1. One
2. Where The Streets Have No Name
3. Stories For Boys
4. 11 O'Clock Tick Tock
5. Out Of Control
6. Beautiful Day
7. Bad
8. Every Breaking Wave
9. Walk On (Ukraine)
10. Pride (In The Name Of Love)

Side 2 - Larry
1. Who's Gonna Ride Your Wild Horses
2. Get Out Of Your Own Way
3. Stuck In A Moment You Can't Get Out Of
4. Red Hill Mining Town
5. Ordinary Love
6. Sometimes You Can't Make It On Your Own
7. Invisible
8. Dirty Day
9. The Miracle Of Joey Ramone
10. City Of Blinding Lights

Side 3 - Adam
1. Vertigo
2. I Still Haven't Found What I'm Looking For
3. Electrical Storm
4. The Fly
5. If God Will Send His Angels
6. Desire
7. Until The End Of The World
8. Song For Someone
9. All I Want Is You
10. Peace On Earth

Side 4 - Bono
1. With Or Without You
2. Stay
3. Sunday Bloody Sunday
4. Lights Of Home
5. Cedarwood Road
6. I Will Follow
7. Two Hearts Beat As One
8. Miracle Drug
9. The Little Things That Give You Away
10. 40

プロデュースしたジ・エッジが、このアルバムに関して以下のコメントを発表している。

「音楽で僕らは、タイムトラベルができる。
それで、バンド初期の曲を、現在のものとして、21世紀的な解釈をしたら、一体どんな恩恵がもたらせるのか、またはされないのかが、知りたくなったんだ。
これは、もともと実験として始めたことだったんだけど、新解釈をしているうちに、すぐに夢中になってしまった。
ポストパンクの衝動は、親密さに代わり、テンポも、キーも新しくなり、場合によってはコードや歌詞すら新しくなった。
だけど、本当に偉大な曲というのは、どう変わったとしても、偉大なままなのだということも分かった。

その曲を再訪するというか選曲をするのに、まずデモ制作をした。それで曲を必要最小限の形にしたら、それがどう成立するのかを見てみた。それともうひとつ重要な目的は、曲にどのように親密さをもたらすのかということだった。というのもほとんどの曲は、ライブでパフォーマンスすることを念頭に作った曲だったから。

そう考えながら作ったスケッチのようなレコーディングをプロデューサーのボブ・エズリンと聴いてみたら、そのままで良い曲と、もっと手をかけなくてはダメな曲が、簡単に分かった。そこでみんなで目指したのは、曲は削ぎ落とせば落としただけ、豊なものになる、ということだった」

「曲同士がどのように関わり合うかを聴きながら、この4枚の曲順を決めるのは、本当に楽しかった。思ってもみなかったような驚きの繋がりが発見できたし、DJになったみたいだった。それで4枚の個性的なアルバムができたら、それぞれの看板になるのは誰かを決めるのは簡単だった」

アルバムは、バンドのサイトですでに予約が開始している。

限定版はナンバリング入りのボックスに入り、4枚別々のスリーブで、ブックレットがあり、ボノによる新歌詞やアントン・コービンによる写真、エッジによるライナーノーツなどが入っている。
https://shop.u2.com/

2)ケネディ・センター名誉賞受賞。
バンドは、去年12月4日に、アメリカで文化人に贈られる最高の賞、ケネディ・センター名誉賞をアイルランド人として初めて受賞した。彼らの他には、ジョージ・クルーニー、エイミー・グラント、グラディス・ナイトなどが受賞。

授賞式ではなんとエディ・ヴェダーが、”One”と”Elevation”をカバーしていてこれが最高。

”One”

“Elevation”

さらに、ビヨンセから、ハリー・スタイルズビリー・アイリッシュフィニアスなど豪華メンツが紹介のビデオに登場。

そう言えば、昔ボノが、正確になんて言ったか忘れたけど、自分は、アリーナでライブすると、1人でも座っている人がいるとその人が見えて気になって気になって仕方ない。その人になんとか立ち上がってもらおうと思ってしまうタイプなんだけど、エディは、そんなこと関係なくいつもでも最高のパフォーマンスができる、というようなことを言っていて面白いと思った。

3)ボノが自伝『Surrender : 40 Songs, One Story』を発売

自伝のタイトルと、アルバムのタイトルが似ているので、どちらかがどちらかに影響したんだと思う。

オーディオブックも出ていて、ボノ自身が朗読している。

さらにこの本の発売に合わせてボノがブックツアーを行った。私も、NYでニューヨーカー誌が行ったイベントに行ったのだけど、これが例えば、デイヴ・グロールが自伝を出した後に行ったブックツアーにも似ていた。ここでしか見られない特別なイベントだったのだ。キャパはたった800人の会場で、ボノが、本を少し読み上げてそこから”Vertigo”, “City Of Blinding Lights”, “With or Without You”, “Sunday Bloody Sunday"を披露。バンドには2人しかいなくて、チェロとドラムとキーボードという「必要最小限の形」にした演奏だった。

場所は違うけど、この映像が正にそう。背景に手書きの映像や文字が映し出されていた。

この時はニューヨーカー誌がモデレーターでQ&Aも行われたけど、その後、ボノは、2000人規模の会場でこれをさらに拡大した形でツアー開始した。NYでの公演はその時に即完だったので、5月に再びライブを行う。11回も公演を行うのだけど、即完というか、定価のチケットは即完で、現在ではどんなに安い席でも300ドル以上というとんでもない値段が付いている。ブルース・スプリングスティーンが自伝を出した後に、ブロードウェイでレジデンシーをしたのも少し思い出す。

U2はケネディ・センター名誉賞を受賞した際に、ワシントン・ポスト紙のインタビューに答えてラリー・マレンJr.が、自分が手術をしなくてはいけないので、2023年はツアーに参加できない。もしバンドがツアーするなら自分抜きだ、という発言をしていた。何の手術なのかはそこでは語られていないけど。なので、U2は今年は何の動きもないんだろうと思っていた。

しかし、ボノは、ラリーがいなくてもできる形で、ツアーを行い、バンドは新作を出す。もしかしたら、同様の最小限の形にしていつもとは違うライブやツアーが行われる可能性もあるのかもしれない。

ラリーの手術が無事終わりますように。



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