ウォシャウスキー監督にインタビューした! 最新作『クラウド・アトラス』は激しく賛否両論。トロント映画祭その6


制作費なんと1億ドル(約80億円)。ラナ&アンディ・ウォシャウスキー監督とトム・ティクヴァ監督が、インディ映画として史上最高の制作費で作った作品『クラウド・アトラス』を観た!

主演はトム・ハンクスに、ハル・ベリーに、ヒュー・グラント他多数で、しかも、時代も国も変わる物語が6つもあり、その中で、それぞれの役者がいくつもの年代のいくつもの役柄を演じているというとんでもない作品で、史上最高の野心作とすら言える。

だからこそ映画を観終わった後の、ジャーナリスト達の反応が凄まじい。激しく好きか、激しく嫌いかのまっぷたつに分かれているのだ。でも、新しいことに挑戦するというのは、正にそういうことなんじゃないかと思うのだ。意味不明と思う人が出て来てもおかしくない。そもそも『地獄の黙示録』だって公開当時のNYタイムスには、「ハリウッド史上最も悲惨な映画」と書かれたくらいだし。

この作品が嫌いと言う人の理由は、物語が複雑すぎるということだ。実は私も原作を読んでいなかったので、始まったばかりの時は、「やばい。物語についていけない」と思って必死に「ケンブリッジ1936年」とか「サンフランシスコ1973年」とか「ソウル2014年」とかメモしていたんだけど、それが、意味がないということに途中で気付く。というのも、すべての物語は、関係し合っていて、ひとつになっていくということが分かるから。だからそれに気付いた瞬間からこの物語は、これまで体験したことのないような、または子供の頃に映画を観た時に感じたような、思いきりマジカルなものになっていくのだ。

現在、何もかもが瞬時に手に入るようになり、即興の喜びが溢れているように思える時代に、大人として、映画館に行って、こんな大スケールで、マジカルな体験をさせてくれる映画というのは、他にはないと思う。元々彼らがインディ映画として作らなくてはいけなかった理由というのも、もちろん、前例がないから資本家は不安なのである。それをやり遂げてしまった監督達には本当にブラボーと言いたい。

そして、今回トロント映画祭において、なんと監督3人に対面取材をするあり得ない幸運な機会に恵まれた!

ラナは本当に素敵で優しくてチャーミングな女性で、アンディは、ガタイが大きくてスキンヘッドで声も低いんだけど、話すことはポエティック。コーエン兄弟もそうだけど、このふたりはまるでふたりでひとりのような話し方をするのだ。さらに、このふたりの間に自然にとけ込んでいるトム・ティクヴァ監督(『ラン・ローラ・ラン』)。映画を観る前は監督3人なんて難しいだろうと思ったのだけど、観終わった後は、6人くらい必要だったかも、と思ったほどの大作だった。取材は、超豪華ホテルで行われたのだけど、その部屋の天井が異様に高くて、豪華な家具がどーんと置かれていて、まるで『マトリックス』の一場面に紛れ込んだような大変シュールな体験となった。

日本での公開時には、このインタビューをご紹介できると思いますので。お楽しみに!

日本公開は2013年春のようです。日本公式サイトはこちら。
http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas/index.html

photos by Jason Merritt
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事