Czecho No Republic『Santa Fe』:信じる者は救われる

Czecho No Republic『Santa Fe』:信じる者は救われる
『Santa Fe』。Czecho No Republicのニューアルバムのタイトルは、おそらく宮沢りえの写真集から取ったのではない。「サンタフェ」とはスペイン語で「聖なる信仰」という意味だ。どういう意味合いでこのタイトルをつけたのかは知らないけれど、言われてみれば確かに「サンタフェ」なアルバムだと思う。「聖なる信仰」。チェコの『Santa Fe』は確かに、信仰告白のようなアルバムなのだ。チェコの、もっといえば武井の、音楽に対する信仰の告白。このアルバムの武井は、音楽にすべてを委ね、音楽に救済されている、そんな気がする。

そういうふうに書くとどんなに高尚な音楽やってるんだろうと思われそうだが、もちろん、チェコなのだから当然ポップだ。おそらく、これまでのどの作品よりもポップに突き抜けている。で、なぜここまで突き抜けられたのかといえば、彼らが彼ら自身の音楽だけを、ほとんど盲目的に信じることに決めたからだ。

このアルバムに向かうにあたって武井が最初に標榜したのは「サイケ」だったという。結果的にシンセポップが主体となっていったが、サイケもシンセポップも、根っこは同じだと思う。要するに、このアルバムでチェコが目指す場所は、現実を後にしたユートピアなのだ。そのユートピアで、彼らは徹底的に想像力を羽ばたかせ音と戯れる。《不安で 今も/逃げ出したいんだ/描こう だから/目を閉じて》と歌う”Firework”は、そんなこのアルバムのモードを端的に表現している。”Beautiful Days”も、”イメージ”も、”オルゴール”も、そのモードの上で書かれている。

なぜそんなモードにどっぷりつかったのか、といえば、それが武井にとって唯一、全力で戦える戦法だったからだ。とかく自信なさげだったり、悩みがちだったり、歌いたがらなかったり、そういうところがある武井という男が、何にもとらわれず音楽と向き合い、音楽を生み出すためには、音楽以外をシャットアウトする必要があった。バンドという形も、自分がフロントマンであるということも忘れて、このアルバムの楽曲は作られている。だからとても自由で、とても豊かなのだ。

《流行りの歌はよく分からないけど》と武井は”オルゴール”で歌っている。たぶん以前だったらこのフレーズはネガティヴな意味を帯びていたのかもしれない。でもこの曲ではそのあとに《All Right》と続く。流行りやシーンの空気ではなく、それ以上に信じるものがあるから大丈夫なのだ。このアルバムのポジティヴな空気は、きっとチェコの未来を築いていく。
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