ジャニスの命日に映画『リトル・ガール』を観た。『アナ雪』世代にこそ知ってほしい!
2016.10.05 23:43
昨日、10月4日ジャニス・ジョプリンの命日に、現在公開中のドキュメンタリー映画『ジャニス リトル・ガール』を観た。
「ありのまま」のレリゴー志向が一般的となった2010年代には考えられないが、
1960年代にありのままの自分を貫こうとしたジャニスの行動が本当に過酷で、凄まじい。
当時は、女性が本音を口にしたり歌ったり、男たちと一緒にバンドすること自体が、とんでもない冒険だったのだから。
「私でいるのって想像以上に大変なの」
という彼女自身の発言があるが、そりゃそうだろう、と思う。
27歳で夭折、という悲しい事実からロックの悲劇として捉えられることが多いが、しかし、この映画の中での彼女はとても生き生きしている。
彼女自身の映像や、家族、元バンド・メンバーや関係者たちの証言からなるドキュメンタリー。
ジャニスの手紙をキャット・パワーが朗読している。
自分のやりたいことを徹底的に貫き通したジャニスだが、常に家族への手紙を通して、キャリアの成果を報告をしているところがいじらしい。
ジャニス・ジョプリンの映画は以前もあったが、本作はひとりの少女~女性としての彼女の素顔が描かれている点にとても心惹かれた。そうした意味では、エイミー・ワインハウスの映画『エイミー』と似ている部分も多い。
セクシャリティやドラッグやアルコールについても赤裸々に描かれているが、センセーショナリズムとは違う視点なのもよかった。
すべて終わったあと、もう一度冒頭のライヴ・シーンが観たくなった。
「何が欲しいの? 望みは何?
恥ずかしがらずに話してごらん
ママが全部かなえてあげる」
「得体の知れない感情が湧いてきた時に必要なのは優しくしてくれるママ
あなたの話に耳を傾け 胸に抱き寄せてくれる存在」
背中をドン!と押してくれるのがロックの大きな魅力だとしたら、ジャニスの歌はリスナーの心を抱き寄せることで肯定する。
女性ヴォーカリストを「母性」として括られるのは好きではないが、リスナーの孤独や痛みに直接手を伸ばすロックは、当時明らかに画期的だっただろうし、やはりここに彼女の歌の本質があると感じられた。
本能的で破天荒なイメージが強いが、とても知的で頭のいい人だったことがすごくよくわかる。
全国順次公開中なので、知らなかった方にこそ触れてみてほしい。
下記はそのサントラ。(井上貴子)