ジェイムス・ブレイク、新作『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』をリリース! 新世代への畏怖を顕にするリードSGが切ない

ジェイムス・ブレイク、新作『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』をリリース! 新世代への畏怖を顕にするリードSGが切ない

9月10日に、待望の5 thアルバム『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』のリリースを発表したジェイムス・ブレイク。それと同時に、最新作からのリード・シングル“セイ・ワット・ユー・ウィル”が公開された。キーボード・フレーズが白昼夢のようにリフレインし、翳りを帯びたJBの歌声が響いてくる。エレクトロニック・サウンドが控え目なアレンジは前々作『ザ・カラー・イン・エニシング』と地続きだが、とりわけ興味をそそられるのはその歌詞とMVの内容である。

ドラマ仕立てのMVには、今をときめくフィニアス・オコネル(言わずと知れたビリー・アイリッシュの兄にして気鋭プロデューサー)が出演。JBが若きフィニアスに男の暗い嫉妬心を抱く、というストーリーになっている。いやいや、JBだってまだ若いだろ、と思わずツッコんでしまったが、ジムのランニング・マシンでゆっくりウォーキングしているJBが、フィニアスの軽快なランを恨めしそうに見つめる様子には同情せざるを得ない。シーンはライブ会場へと移り、無数に増殖したフィニアスの視線に重圧を感じながら“セイ・ワット・ユー・ウィル”を歌うのだが、最終的には自分自身と向き合い、クライマックスの感動的な旋律に救済を得ることになる。MVのラストには、セオドア・ルーズベルトによる「比較とは喜びを奪うもの」という言葉が引用されている。

肉体的な若さや新世代の感性に対する脅威は、多くの人が味わうものだろう。ましてや、今のフィニアスが体現している破竹の勢いや栄光は、若かりしJBが体現してきたものに近しい。世界中の人々と交流し愛の日々を生きてきたJBだったが、またもや人生の新たな、逃れ難いブルースに直面していたのだ。言うまでもなく、それをテーマに歌うことは今のJBにしかできないことである。ロックダウン中のInstagramライブや近作EPでも存在感を示してきたが、いよいよ巨大な心の闇をポップに歌い、救済するJBが帰ってきた。コンセプチュアルな作風に仕上げられたという新作が楽しみだ。(小池宏和)



ジェイムス・ブレイクの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ジェイムス・ブレイク、新作『フレンズ・ザット・ブレイク・ユア・ハート』をリリース! 新世代への畏怖を顕にするリードSGが切ない - 『rockin'on』2021年9月号『rockin'on』2021年9月号

rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする