これは、ブライアン・イーノ自身の新たな感情の探究 ―― 17年ぶりとなる傑作ボーカルアルバム、誕生! 静謐なスピリチュアリティに満ちた傑作の魅力に徹底フォーカス

これは、ブライアン・イーノ自身の新たな感情の探究 ―― 17年ぶりとなる傑作ボーカルアルバム、誕生!  静謐なスピリチュアリティに満ちた傑作の魅力に徹底フォーカス - rockin'on 2022年10月号 中面rockin'on 2022年10月号 中面

京都で開かれたブライアン・イーノ展『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』は素晴らしかった。ミニマルでアブストラクトでとことん曖昧な表現であるからこそ、散文的なメッセージを超えた深い思索とイマジネーションを呼び起こしたように思えた。

その余韻が冷めやらぬ中、イーノの新作が発表される。本格的なボーカルアルバムとしては『Another Day On Earth』以来、17年ぶりとなる『フォーエヴァーアンドエヴァーノーモア』だ。イーノはプレスリリースでこう語る。

「皆と同じように、私は狭まっていく不安定な未来について考えてきた。この音楽は、そのような“感情”から生まれたものだ。その思いを共有する私たちは、世界が目まぐるしい勢いで変化し、その大部分が永遠に消え去ろうとしていることに気付いている。だから、このアルバムタイトルにしたのだ」。

具体的には、気候変動問題について考え、インスピレーションを受けたということのようだ。

「これらの歌は決して、何を信じ、どう行動すべきか伝えるためのプロパガンダではない。これは私自身の感情の探求なのだ。“感情”は思考の始まりであり、思考になくてはならないものでもある。しばしば脳が意識している以上に身体全体が反応するものだ」。

どんな理知的で論理的な思考も、曖昧でアブストラクトな感情のざわめきから始まる。そうイーノは言う。ポップな面も見せた『Another Day On Earth』に対して、ノンビートの徹底してアンビエントでアブストラクトな音像が展開され、そこにイーノの柔らかく穏やかな歌がしんなりと馴染む。歌詞のある歌であっても、明確なメッセージや物語を伝えるのではなく、イーノ自身の感情の揺れを伝えるような余白と曖昧さが、聴き手の心を揺さぶり、深い思索へと導く。

本作を上質なサウンドシステムで聴けば、深く静かな海の底をひたすら潜って行くようなスピリチュアルな体験が得られるだろう。だがスマートフォンのスピーカーを鳴らすような聴き方でも、日常の因果律を逸脱するような新たな知見が待っているはず。それがイーノ流アンビエントの曖昧さが持つ奥深さなのだ。 (小野島大)



ブライアン・イーノの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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