トム・ヨークの息子×ヤニック・ガーズの息子 ―― 二世シーンに新星登場!

トム・ヨークの息子×ヤニック・ガーズの息子 ―― 二世シーンに新星登場! - rockin'on 2023年2月号 中面rockin'on 2023年2月号 中面

「親がロックスターであることは子供にとって祝福でもあり、呪縛でもある」。そう語ったのはアイアン・メイデンのギタリスト、ヤニック・ガーズの息子ディランだ。ミュージシャンや俳優に留まらず、どんな業界においても二世の苦悩は(周りからは理解されづらいという点まで含めて)根深いものがあるが、中でも音楽を志す子供にとって親がロックスターであることは単純なスキルの優劣から声質や音楽テイストの差異、「カリスマ」なる曖昧な領域のジャッジetc.、二重三重四重に比較されてしまう難儀な血縁には違いない。

しかし、そんなディラン・ガーズがなんとレディオヘッドトム・ヨークの息子=ノア・ヨークと臨時の二世ユニットを結成!……という驚きのニュースが飛び込んできた。

現時点ではあくまでお試しタッグのようだが、メイデンとレディオヘッドという、それこそ父親の代では永遠に交わることがないメタル界の頂点と文系ロック界の頂点が、息子の代ではあっさり手を組めるという文脈の飛躍が最高だし、彼らの新曲“Red Skies”は二世のプレッシャーに言わば変化球で挑んだ、なかなかクレバーな一曲なのだ。

ノアのソロワークについては本誌でも以前紹介したことがあるが、今回のコラボ曲はそこから遥かに完成度を高めた幽玄のフォークサイケに仕上がっている。ディランの作り出すちょっとゴシックでアメリカンフォークロアなメロディ&ボーカルに対し、ノアはザ・バーズを彷彿させる12弦ギターで奥行きを生み出し、父親譲りの物悲しいファルセットコーラスをそこに響かせている。父親たちの呪縛から逃れつつも受け継いだDNAに感謝し、リスペクトも忘れない、最良の着地点を見出した一曲だと言えるんじゃないだろうか。

ロック界の二世ブームも一周二周し、リアム・ギャラガーの息子レノンのオートモーションや、スリップノットの子供たちによるバンドVended、トミー・リーの息子ディランがやっているMotel 7などZ世代がどんどん登場し始めているが、現時点で最もレフトフィールドなことをやっているのがこのディラン&ノアだと言える。活況を呈する二世シーン、これからも要注目です。 (粉川しの)



ノア・ヨークとディラン・ガーズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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