UKサッドの星:ドーターが辿り着いた答え、『ステレオ・マインド・ゲーム』とは? ―― 悲しみの10年代から、希望の20年代へ

UKサッドの星:ドーターが辿り着いた答え、『ステレオ・マインド・ゲーム』とは? ―― 悲しみの10年代から、希望の20年代へ - rockin'on 2023年5月号 中面rockin'on 2023年5月号 中面

現在発売中のロッキング・オン5月号では、ドーターの新作『ステレオ・マインド・ゲーム』ロングレビューを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。



文=粉川しの

先月号のヘッドラインでは「ドーターの帰還」と評したが、待望の新作『ステレオ・マインド・ゲーム』を何度か聴くうちに、むしろそれは単なる帰還と言うよりも、ドーターがようやく辿り着いた「答え」としての意味合いが強い作品ではないかという感想に至った。『ステレオ〜』を聴いていると、10年代半ばにUKサッドの星と呼ばれたドーターが幾重にも折り重ねてきた仄暗い感情のベールが一枚、また一枚と剥ぎ取られ、彼女たちの音楽の確かな輪郭が浮かび上がってくるのを感じる。

本作のサウンドは驚くほどしなやかで力強く、温かくオーガニックな弦楽と、未だかつてない推進力を秘めた声楽が聴くものを包み込んでいく。自分たちとリスナーの間に、孤独という名の杭を打ち込む様だった、かつてのドーターとは明らかにモードが違う。しかもそれはいきなり彼女たち固有のサッド成分が消え失せた断絶的な変化ではなく、7年越しで壮大な伏線が回収される様な感慨を覚えるドーターの現在地なのだ。

とは言え、何しろ7年ぶりのニューアルバムだ。『ステレオ〜』で初めてドーターを知る若いリスナーも多いだろう。改めて彼女たちのプロフィールをおさらいしておくと、ドーターはエレナ・トンラ(Vo/G)を中心にイゴール・へフェリ(G)、レミ・アギレラ(Dr)によって10年に結成された。ちなみにバンドの拠点は彼女たちが出会ったロンドンだが、イタリア、アイルランド、スイスと多国籍なバックグラウンドを持っている3人でもある。

12年に4ADと契約を結び、翌年にはデビュー作『イフ・ユー・リーブ』をリリース。時のUSインディとも共振するネオフォークサウンドを基調に、シューゲイズの残り香とアンニュイなポストロックを纏わせた同作は、そこで今まさに鳴っているものと同等に、いや、もしかしたらそれ以上に、そこから欠落していったものの「気配」によって際立ったアルバムだった。(以下、本誌記事へ続く)



ドーターの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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