ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が2020年の『マジック・ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー』以来、約3年ぶりのアルバム『アゲイン』を9月にリリースする。
近年のOPNことダニエル・ロパティンのトピックといえば、何と言っても2021年のスーパーボウルのハーフタイムショーでのザ・ウィークエンドのステージの音楽監督、そして翌年の『ドーン・エフエム』のエグゼクティブプロデューサーを務めたことだろう。他にも多くのアーティストの作品に参加したり、シャネルのコレクションショーでパフォーマンスをおこなったりと、音楽家/プロデューサーとして引く手あまたの活躍を見せるだけでなく、ファッション界や映画界からも熱い注目を受ける存在になっている。
『アゲイン』はロパティン自身の思春期を呼び起こした『ガーデン・オブ・デリート』(2015年)と同様、現在の自分と若い自分とのコラボレーションとして始まったという。ロパティンは作品について「観念的自伝」だと説明しているが、現在の彼は活動が大きく広がっているからこそ、自身の作品としては個人の内省に向かったということかもしれない。
だが、そこは毎回奇妙なコンセプトを用意してきたOPNである。本作も記憶が時空を超えて形を変え、「非論理的時代物」に仕上がったとのこと。また本作のトレーラーでは、クラシカルな音楽をバックに街の様々な人びとが「ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー」と口にしている。そうしたものからはいったいどんな音楽が飛び出すのか想像できないが、だからこそ期待は高まるいっぽうだ。
本作のアートワークにはデンマーク出身の現代美術家マティアス・ファルドバッケンが制作した彫刻作品がフィーチャーされている。これまでも現代アートとのシャープな共振を示してきたOPNだけに、どのような含意があるのか気になるところ。それは、音楽シーンに限定しない多方面にインスピレーションを与えることにもなるだろう。作品ごとに異なる音楽的/芸術的心象を描いてきたロパティンの新たなモードを堪能したい。 (木津毅)
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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