フランスはトゥール出身のSSW/マルチインストゥルメンタリストであるFKJ(両親の出身地であるフランスとニュージーランドにちなみ、French Kiwi Juiceを名乗る)ことヴィンセント・フェントンが、この9月11日に4年ぶりとなるニューアルバム『タイバー』をリリースする。パンデミック下で深く内省し自我を見つめた密室的な前作『ヴィンセント』(2022)は世界中のリスナーから注目され、大規模フェス出演やライブツアーでの活躍に繋がったが、新作『タイバー』では急激な環境変化に戸惑いながらも自身を支えてくれる人々との緊密な繋がりに注目し、前作とは対照的にロンドン、ロサンゼルス、パリ、ブラジル、メキシコ、フィリピンなど世界中を旅しながら楽曲制作が進められたという。6月に届けられた先行曲“ソウルメイツ”は、オルガンのリフレインと鮮やかなギタープレイに彩られたヒップホップソウルで、心地よくレイドバックしながらも《ソウルメイトよ、どこにいる?》という問いかけに孤独な彷徨を感じさせる楽曲であった。また、7月末の“ハウ・マッチ・ダズ・イット・テイク・トゥ・シフト・イット・オール”は、英ウェスト・ヨークシャー出身のルーシー・パークとの滑らかなユニゾン歌唱を披露するMPBテイストの楽曲で、幻想的な映像美を融合させたFKJの一人セッション動画も公開されている。ハイレベルな楽器演奏とトラックメイキングが織り成すボーダーレスポップの作風は相変わらずだけれども、新作はシティソウル、クラブジャズからドローン/サイケまで、視界と内面がリンクしながら当て所なく旅するような表現の広がりを感じさせる手応えだ。エリン・アレン・ケインとの制作曲を10年越しに完成させたり、ラビリンスの滋味深い歌をフィーチャーした壮大な抒情詩の如きトラックなど、興味深い人選のコラボレーションを交えながら、実験精神と生活感に満ちた息遣いがたっぷりと注ぎ込まれた『タイバー』。12月には都内での新作ツアー来日公演も予定されているので、音源もライブもじっくり体験してほしい。(小池宏和)
FKJの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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