【今月の気になるあいつ】ダヴ・エリス
アイルランド・ゴールウェイ出身のSSW。2025年にデビュー作『Blizzard』を発表し、世界中のインディーファンから一躍注目を集める。素朴ながらも胸を打つフォークサウンドと、生々しくエモーショナルな歌声が魅力。Geeseのツアー帯同でも話題を呼び、次世代を担う超新星として急速に評価を獲得。楽曲の持つ圧倒的な情動と美しさは必聴。今最もライブを体感すべき気鋭のアーティスト。
現在発売中のロッキング・オン11月号では、「気になるあいつ」にてダヴ・エリスの論考を掲載しています。本記事の一部をご紹介。
テキスト=木津毅ロッキング・オン・ソニックへの出演が決定し、今年のマーキュリー賞にもノミネートされた新鋭のシンガーソングライター、ダヴ・エリス。日本ではまだあまり知られていない存在だが、だからこそ、このタイミングで観られるのは貴重だ。というのも、近年のニューカマーのなかでもとくに熱く将来が期待されているからである。その理由は他でもない、彼の音楽自体が鮮烈だったからだ。
それまでほとんど無名だったにもかかわらず、25年12月にファーストアルバム『Blizzard』をリリースすると、ニック・ドレイク、ジェフ・バックリィ、エリオット・スミスといった名前が比較として挙げられ、いきなり批評家から絶賛を受けた。
そうした評からもわかるように、ダヴ・エリスの音楽は基本的にはバラードを中心とするフォークで、何よりも歌の情感が核にあるもの。熱心にプロモーション露出をしていたわけでも、ましてやソーシャルメディアでバズを起こしたわけでもない。本当に歌のみの力で聴き手を魅了したのだ。ダヴ・エリスことトーマス・オドノヒューは、アイルランドのゴールウェイ出身の、まだ20代前半の若者だ。ギターを手にしたことで13歳から曲作りを始め、その後マンチェスターに移り、ロンドンなどで地道に音楽活動をしていた彼がはじめに広く注目を受けたのは、25年、ギースのツアーでオープニングアクトを務めたことだった。
とはいえ、ダヴ・エリスとしてはまだデビューシングル“To the Sandals”をリリースしたばかりのタイミング。同年もっとも勢いのあるホットなインディバンドだったギースが抜擢するこの新人は何者なのか、一部で話題になっていたのだ。そして、実際のライブによってじわじわ評判を集めていき、『Blizzard』につながったというわけだ。 ほとんどインタビューも受けていないため謎めいた存在とされていたが、かえって期待が高まっていたところもあるだろう。
実際、『Blizzard』はとても力強く、同時に繊細で、そして胸を打つ歌が収められたアルバムだ。弾き語りフォークをベースとしてドラマティックに展開する歌唱で一気に引きこむワルツ曲““Little Left Hope”、穏やかながらもエモに通じる芯の通ったメロディが響く“Pale Song”、初期のルーファス・ウェインライトを彷彿させるアップリフティングな“Love Is”と、頭3曲だけでもずば抜けて曲が書けるひとであることがわかる。抑制されたトーンで始まり終盤でエモーションを爆発させる“When You Tie Your Hair Up”があり、かと思えばアイリッシュジグを取りこんだ陽気な“Jaundice”で驚かせるなど、しっかり曲ごとに個性もある。人間的に生き生きとしたアンサンブルも素晴らしいが、やはり何といってもオドノヒューの歌の表現力が圧倒的だ。ハスキーなその歌声はつねに深みがあり、感情とともにデリケートさとパワフルさを自在に行き来してみせるのだ。(以下、本誌記事へ続く)
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