コールドプレイのライブで、何故たくさんの星が降ったのか
2014.06.16 12:07
最新作「ゴースト・ストーリーズ」 のハイライトはラスト前のナンバー「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」だ。EDMの波を正面から受け止め、それに見事に乗ってみせた、アルバム唯一とも言っていいアッパーなナンバーだ。
先日行われた日本でのスペシャル・ライブでも、この曲はアンコールで、大量の星の紙吹雪きのなかで歌われ、とても盛り上がった。
ステージ・セットも星がメインのテーマになっていて、この曲が単なるアルバムの中の一曲というだけでなく、もっと大きな存在であることが分かる。
最近のコールドプレイのスタジアム・ポップ路線から見ると、最新作はかなり抑制感のある作品になっている。
しかし、このアルバムのメインのコマーシャリズムは、実はこの空いっぱいの星というイメージだ。
ジャケットも星と天使のイメージで統一されている。アルバムを聞いていると、全体が「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」をクライマックスとする、大きな組曲のように聞こえ来る。
常に空いっぱいの星がイメージされるのだ。それに気付くと、抑制的に聞こえていたアルバムの一曲一曲が、まさに星のようにキラキラと輝き始める。これは凄い仕掛だ。
正直言って僕は余りいいコールドプレイの聞き手ではない。
しかし番組の為にアルバムを選曲しているうちに、このバンドの持つ立体的なコマーシャリズムの構造に気付き、感心してしまった。
ひょっとしたら無意識の戦略なのかも知れないが、素晴らしいと思う。クリス・マーティンの、今ある聞き手の欲望を感じ取り、それを音楽と、その先にあるイメージにまで形にしてしまう才能は破格のものと言える。
今週のワールド・ロック・ナウで紹介する。