日経ライブレポート「チープ・トリック」

今更の感想かもしれないが、まるでアニメのキャラのようだった。何十年経ってものび太はのび太だし、ジャイアンはジャイアンであるように、デビューから40年以上経ってもリック・ニールセンもロビン・ザンダーも、トム・ピーターソンもイメージが変わっていない。老けないというのではなく、同じなのだ。こんなバンドは他にない。確かに人間なので年齢による外見の変化は多少あるが、キャラクターとしてのイメージが変わっていない。特にヴォーカルのロビン・ザンダーの声が若々しいままなのが驚異的だ。初期の代表的なヒット・ソングがたくさん歌われたが、それを聴いていると今が2016年なのか1976年なのか分からなくなってくる。

サウンド的にも彼らはデビュー当初から一貫している。長いキャリアの中で多少の変化はあったが、その基本はストレートなパワー・ポップ・ロックだ。ポップなメロディーをストレートでパンクなロック・ビートに乗せて歌うスタイルは数多くの後輩バンドに影響を与え、ついに今年ロックの殿堂入りを果たした。メジャー・レーベルから契約を切られ、レコード制作もままならなかった時期もある彼らだが、時代や流行に迎合することなく独自のスタイルを貫いてきた。キャラクターも音楽スタイルもデビュー当時から変わっていない。それは保守的というよりも、とても過激な姿勢だったと言える。

今年、彼らは7年ぶりのアルバムをリリースした。ドラムが代わり新しいメンバーとなり、サウンドはより純化された。つまり王道のチープ・トリック・サウンドになったのだ。何回目かの黄金期に彼らがあるのを感じさせるステージたっだ。

11月16日、新木場スタジオコースト。
(2016年12月2日 日本経済新聞夕刊掲載)
渋谷陽一の「社長はつらいよ」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする