日経ライブレポート 「ドゥービー・ブラザーズ&デレク・トラックス・バンド」

70年代から活動を続ける伝説的なバンドであるドゥービー・ブラザーズと、21世紀のギター・ヒーローが率いるデレク・トラックス・バンドの共演は、いろいろな意味で興味深く楽しいものであった。きっとお客さんのほとんどはドゥービーを目的に来たと思うが、その状況の中でデレク・トラックス・バンドは堂々のパフォーマンスを展開し、最後はアンコールの熱い拍手も起きた。
 
昔、ロック・ヒーローはギター・ヒーローであり、長いギター・ソロはロック・ライヴのハイライトであった。しかし、そんな時代は過ぎ去り今や長いギター・ソロはロックの中で一種の古典芸能的な領域に入ってしまった。そんな時代、バンドの中心にギターを置きそのソロ楽器としての魅力を追求したデレク・トラックス・バンドの在り方は、かなり異色といえるだろう。しかもブルースをベースとしながら懐古的にならず、あくまで21世紀のモダン・ロックとしてのリアルを体現しているところが見事である。一方ドゥービーは凄腕のギタリストが3人も居るギター・ロック・バンドなのだが、ギター・ソロを聞かせるというよりは、アンサンブルとハーモニーを主眼とする当時としてはユニークな姿勢のバンドであった。だからこそ時代を超えた魅力を保ち続け、21世紀の日本でもたくさんの聴衆を集める事が出来ているのだろう。代表曲は全て聞かせる楽しいステージに誰もが満足したはずだ。

途中、デレク・トラックスがゲストとして参加し、ソロを弾いたのだが、音色からフレーズまでドゥービーとは全く違う事に驚いた。どこか苦いのである。ロックとギターを簡単には信じられない時代のギターである事をドゥービーとの対比の中で感じた。


9月26日 東京国際フォーラムA
(2009年10月6日 日本経済新聞夕刊掲載)
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