ビーディ・アイ終了

ビーディ・アイ終了

夕闇が次第にマリンを包む。ビーディ・アイの日本初パフォーマンスは、ある意味予想通りであり、ある意味予想を裏切るものだった。


予想通りだったのは、馬鹿みたいだが、そこにリアム・ギャラガーがいたということだった。オアシスではないステージに、リアムがきちんといるということだった。当たり前の話であるのに、どこか座りの悪い違和感を越えて、リアムは自前のバンドの自前の歌を堂々と提示してみせたのである。いや、その当然ぶりこそが、予想を越えるものだったのかもしれない。

当初の予想を裏切られたのは、このフィールドにビッグ・シンガロングは起きなかったということである。この20年に迫る時間、もっとも大合唱をリードしてきたリアムの歌声は、数万のサポートを必要とすることなく、屹然とそこにあった。

いや、それもまた逆の話なのかもしれない。

リアム・ギャラガーにとって、ロックンロールはいつだって、そんなふうに、独りで世界と対峙するものだったからだ。俺と世界、その緊張感の中で、俺の信じる正義としてのロックンロールを歌うこと。だからそれは、原点として孤独なものであって、みんなの歌ではないものなのだ。だからそれは、ある意味リアムらしい、リアムを知るものであれば誰もが予想した通りのことだったのだ。

リアムはこの暑い中、コートで出てきた。ライブの中盤でそれはすっかり汗でドロドロになっていた。(宮嵜広司)
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