エミネムの最新作「リラプス」が凄まじい。
「リラプス」、つまり「(病気などの)再発」という意味。
オバマ以降の気分、アニコレ周辺のネオネオ・ヒッピー気分、今のアメリカの相変わらずの喉元過ぎれば的な都合のいい自己正当化の気分を木っ端微塵にする最重要アルバムだ。最近はすっかり新しい時代と音に乗っかった気分になってブルックリン周辺の音の探訪などに呆けていた自分の頭をカチ割られて目を覚まさせられた。

エミネムの病は再発したのだ。なぜなら病んだ母親に育てられたからだ。
アメリカの病も再発するのだ。なぜなら病んだ生い立ちの国だからだ。

グラミー賞を獲ろうが娘ヘイリーに愛情を誓おうが、エミネムの病は堂々と再発し続ける。

ベトナム戦争が終わってイラク戦争が終わってオバマが大統領になろうが、アメリカの病は再発し続ける。
そこに立って表現し続けなければならない。

薬物中毒が再発し、アルバムの中で狂気を再発させたエミネムは後半の“ビューティフル”でこうラップする。
〈他人に「お前は美しくない」なんて言わせんな 他人なんてクソ食らえ ただ自分に正直でいればいい〉


そしてラストに向かって、また狂気へと戻っていく。
必要なのは心地よい壁紙ではなく、真の表現だ。