カバー・アルバム『ウィーザー(ティール・アルバム)』は、王道を堂々といく選曲で、その清々しさにワクワクする最高の一枚だ!

カバー・アルバム『ウィーザー(ティール・アルバム)』は、王道を堂々といく選曲で、その清々しさにワクワクする最高の一枚だ!

5枚目のセルフタイトル作品『ウィーザー(ティール・アルバム)』の突然の配信リリースには驚いた人も多かっただろう。まさかのカバーアルバム。もちろん、それ以前にはTOTOの“アフリカ”や“ロザーナ”をカバーし配信した経緯もあって、バンドがカバーを楽しんでいることはなんとなく伝わってきてはいたのだけれど、TOTOのカバーについては、ウィーザーの熱心なファンからのリクエストに応えた形であって、まさかアルバムが1枚リリースされるほど、カバー曲のレコーディングが進んでいたとは。で、このアルバム、カバーアルバムながら、ウィーザーというバンドの面白さを如実に現している1枚だと思う。

まずジャケットが最高。ジャケがユニークなのは、いつものセルフタイトル作品同様なのだが、今回はそのベースカラーも含めて、1st『ウィーザー』に近しいものを感じさせ、原点的なものを匂わせながら、メンバーたちのファッション&佇まいからはTOTOへのオマージュが溢れているという、なんとも遊び心に満ちたものだ。そして何よりその選曲である。

カバー曲は、特にそれを作品として残す場合、その選曲は実は頭を悩ますものだと思う。権利関係のことを言っているのではなくて、バンドとして、あるいは一ミュージシャンとして「この曲に影響を受けてきた」「この曲が好きだ」「この曲を自分たちがやったらさらに面白くなる」「自分たちならこうする」等々、オリジナル曲以上に、バンドの本質やエゴを映し出すものだと思うから。マニアックな選曲でバンドの新たな一面を見せたり、音楽愛の深さを見せつけてくれるものも嬉しいけれど、その点、この『ウィーザー(ティール・アルバム)』の選曲の潔さときたら。

TOTOと言えば“アフリカ”なのはもちろんのこと、ティアーズ・フォー・フィアーズなら“ルール・ザ・ワールド”、アーハは言わずもがな“テイク・オン・ミー”、ブラック・サバスは“パラノイド”ときて、マイケル・ジャクソンは“ビリー・ジーン”! これは確信的に王道を堂々と、というコンセプトなのだと実感できて、その清々しさに「だからウィーザーが好き!」という気持ちになる(だってラストを飾るのはベン・E・キングの“スタンド・バイ・ミー”ですよ)。


言ってみればベタを極めた選曲で、しかも原曲を必要以上に壊すことなく、というか、本当に原曲へのリスペクトと、その楽曲を聴いて嬉々として真似して歌ったりギターを弾いたりしていた少年時代の彼らを感じられるようなアレンジで、ストレートにこれら楽曲を楽しんでいるのがまた良い。なのに、すべての楽曲がしっかりウィーザーのサウンドになっている。つまり、原曲の良さを存分に感じさせながら、ウィーザーそのものであるという、カバー作品のあるべき姿のひとつとして、ど真ん中をいっているのである。これなら文句なく誰もが楽しめる。

ユーリズミックスの“スイート・ドリームス”なんて、歌い出しの声は思わずアニー・レノックスか?と一瞬思うほど、その声質の感じとか、シンセの物憂げな響きとかが、繊細に作り込まれてるのだけれど、曲が終わる頃にはやっぱりしっかりウィーザーだと思えるサウンドなのが凄いなと思う。ポップの本質をちゃんとわかっていて、それを潰すことなく伝えてくれる。

今の時代にこの正面切ってのカバーアルバムを作り上げることができるのはウィーザーだけだろう。このアルバムのレコーデイングは楽しかっただろうなあと思う。続いて発売された『ウィーザー(ブラック・アルバム)』にも、そのモードがしっかり息づいているのが感じられるし、ナイスな連続リリース。(杉浦美恵)
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