フィーバー333東京公演を観た! 運動量過剰な多動性ライブから伝わってきた、シンプルなメッセージ

フィーバー333東京公演を観た! 運動量過剰な多動性ライブから伝わってきた、シンプルなメッセージ - pic by Teppei Kishidapic by Teppei Kishida

昨年夏、「FUJI ROCK FESTIVAL ’18」での、雨中のパンいち大暴れパフォーマンスをストリーミング中継で目にした時、「ああ、どうして自分がこの場に居ないんだ!」と悔やんだ。同時に、ツイッターのタイムラインにこのバンドの名前ばかりが並び、多くの人たちが同じ思いを抱いていることを痛感させられたものだ。

そしてついに実現したフィーバー333の単独来日。前夜の大阪公演の盛況ぶりが伝わってくるなか、東京公演当日にあたる3月5日の朝には、お馴染みの情報番組『スッキリ』に登場し、自己初となるTVでの生パフォーマンスを披露。カメラのクレーンによじ登り、床の滑りの良さを利用しながらスタジオ狭しと暴れまくる3人の姿には、同番組のMC、加藤浩次も「こんなに暴れていながら何も壊れていない。ものすごくプロフェッショナル!」と驚嘆。その様子はすぐさまSNS上などでも拡散された。

そんな流れを経て、同日の夜、恵比寿リキッドルームで行なわれた彼らの東京公演は、まさに嵐のような1時間だった。そう、アンコール込みでもたったの1時間だったのだ。が、そこに物足りなさは微塵もなかった。

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開演定刻の午後7時を8分ほど過ぎると、フロアには「333!」コールが自然発生。それに促されるように場内が暗転すると、黒頭巾で顔を隠した男が現れ、アリック(ds)とステヴィス(g/以前はステファンと表記されていたが、今作よりクレジットが変わっている)が配置につき、ものものしいイントロダクションを経て1曲目の“バーン・イット”が炸裂。謎の男の正体はもちろんジェイソン(vo)で、黒頭巾を脱ぎ捨てると同時にスイッチが切り替わったかのように暴れだす。満員のオーディエンスはすぐさまそれに同調。ジェイソンは曲の終盤にはこの夜最初のダイヴを決め、口に含んだ水をまき散らしてみせた。

以降、どの曲で何が起きたかを追っていこうとすると、プロレスの試合(しかも動きの目まぐるしいジュニア・ヘビー級)をレポートするかのような羽目になる。なにしろ続く“ウィアー・カミング・イン”ではジェイソンがステージ袖から脚立を引っ張り出してきて登り、そこからダイヴ。同楽曲を終えると客席を見渡しながら「ぶっちゃけ、これまでで一番クレイジーなショウだ」と笑顔で語っていたが、観衆がクレイジーなのはステージ上の3人がクレイジーだからだ。そして気が付けば、いつのまにか3人は上半身裸になっていた。

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とはいえ彼らのライブはハチャメチャなばかりではない。1月にリリースされたアルバム『ストレングス・イン・ナンバーズ』でも証明されていたように、実はこのバンドの魅力は曲の良さにある。「こういうの、久しぶりだよね」と言いたくなるミクスチャーとしての新鮮さも実際あるが、どの曲にも一緒に口ずさめるような親しみやすいメロディが組み込まれていて、オーディエンスも無条件にそこに声を重ねていく。まだ歌詞を完全には覚えていなかったとしても。実はその歌詞にこそこのバンドの主張があるわけだが、それは家に帰って改めてCDの歌詞カードを眺めた時に理解できればいいこと。まずは二度とない今という瞬間を存分に楽しもうじゃないか、という空気がそこには渦巻いていた。

他にもこの場に書き留めておきたいことは多々ある。たとえば各メンバーの身体能力の高さ。アリックはバク宙まで決めていたほどだし、みんな、ちょっとしたジャンプの高さがすごいのだ。ジェイソンは照明機材を持ち出してきたかと思えばバックドロップを揺らしてみたり、ライブ本編終了間際にはステージの幕を引っ張り出してみたり、会場やイベンター側から叱られそうなことばかりしてみせる。が、そんな多動型ライブからの帰路、彼らの曲のメロディが頭から離れなくなっていることに気付かされた人は多いはずだ。

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余談ながら、ステージ上のジェイソンの発言によれば、『スッキリ』の本番中によじのぼったクレーンには不具合が生じたらしく、彼の口からは「スミマセン。ヴェリー・スミマセン」という陳謝の言葉も。そんな面白さばかりではなく、「自分のためではなく未来のために、ベターな選択をしよう」といったシンプルでわかりやすいメッセージも印象的だった。そしてこの夜に彼らのライヴを観たことは、自分にとってベストな選択だったのだと思っている。終演後の場内にも、当然のように「333!」の連呼が続いていた。(増田勇一)

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