リリース間近、攻めつつも普遍的なクラフトワークの最新ベストAL『3-D 12345678』を聴いた。来日への期待が爆発寸前!
2019.03.18 20:10
いまでも会場入り口で3-Dネガネを渡されたときの高揚感が忘れられない。前回の13年来日公演の時のことだ。
世界でも類のない<3-D・マルチメディア・アート・パフォーマンス>、しかもあのクラフトワークが腕によりをかけて作り上げたステージというだけで内容/クオリティに確信はあったが、それをはるかに越えたストレートな視聴覚的な興奮と、内面的には想像力を喚起するステージだった。
思い出すだけで、間近に迫った来日公演への期待が爆発しそうになる。前回、東京は、基本スタンディングの赤坂ブリッツ、今回は着席でのBunkamuraオーチャードホールだから印象も大きく異なってくるだろうし、着席というと、中野サンプラザでの初来日をすぐに思い出してしまうのだが、考えてみれば、あの時代から視覚的なものへのこだわりが特別なグループだった。そんな盛り上げ気分を加速させるのに最適なアイテムともいえる、最新のベスト・アルバム『3-D 12345678』の登場だ。
最初に触れた前回の<The Catalogue 12345678> ツアーはタイトルが示すように8枚のオリジナル・アルバムを全曲日替わりで演奏するもので、それはそれで刺激的だったが、今度はオールタイム・ベストのセットリストということで、それを反映したようなこのアルバムが出る。
アルバム・タイトルは、3-Dセット用に8枚のアルバムからまとめたとの意で、確かにグループの代名詞的なトラックが全18曲収められ、コンパクトにグループをとらえることができる。もともと近年のパフォーマンスから17年に8枚組CDやBD/DVDなどで発売したものからセレクションされており、映像版『3-D 12345678<BLU-RAY/DVD SET>』も同時発売される(楽曲は同じ)。
クラフトワークといえば、誰もがまず思い浮かべるであろう“アウトバーン”から始まるが、かなり鋭角的なサウンド・デザインで、ここらは最新仕様と言っていいし、すぐに<フクシマ・ヴァージョン>の“放射能”へとつながっていくところが、グループの変わること無い姿勢を示している。
中盤の“ヨーロッパ特急”、“メタル・オン・メタル”、“ABZUG”(『Trans-Europe Express』)、“ザ・マン・マシーン”『The Man-Machine』とつながる流れは、とくに完成度が高く、しかも鮮度が少しも落ちることなく迫ってくる。観客の反応などはカットされているので、ライブ感はあるものの、細かいスタジオ作業も施されていて、ニュー・アイテムとしての説得力は高い。
YMO結成40周年もあって、何かとここらの音が盛り上がるなか、最高のタイミングでの登場であり、あのマンマシーンたちならではの手土産となっている。(大鷹俊一)
『3-D 12345678』のリリース情報と来日公演の詳細は以下の記事より。