ケルシー・ルーの来日公演にぶっ飛ばされる。プリンス、ビョークら驚異的な独創性を連想させる才能がそこにはあった

ケルシー・ルーの来日公演にぶっ飛ばされる。プリンス、ビョークら驚異的な独創性を連想させる才能がそこにはあった

一発で虜になる、美しい衝撃だった。ノースカロライナ出身のチェリスト/シンガーで、ブラッド・オレンジ『フリータウン・サウンド』、『ニグロ・スワン』、ソランジュ 『ア・シート・アット・ザ・テーブル』、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『Age Of』といった重要作に客演してきたケルシー・ルー。今春に初のフル・アルバム『ブラッド』をリリースしたばかりで、絶好のタイミングでの来日公演となった。

ヴェールを被った無国籍な民族衣装でゆらりと舞うように登場するシーンから、時間・空間が彼女に掌握されてしまう。鳥のさえずりがループするフィールドレコーディングのサウンドと、空間系エフェクトを噛ませたチェロのフレーズが折り重なるイントロ、そしてEP曲“Dreams”の立ち上がりで、一気にオリジナルな世界観を築き上げてしまった。

膨らみのある低音域から伸びやかな高音域まで、シンガーとしても一流である。その音楽は掴み所がないようでありながら、どこか東洋的で親しみのある情感を滲ませていたりする。


徐々にバンドメンバーが加わり(ケルシー自身も、少しぎこちないながら楽器をギターに持ち替えたりするマルチインストゥルメンタリストだ)、アルバムでも最もキャッチーなディスコチューン“Poor Fake”からアフリカ系としてのルーツに思いを馳せる“Atlantic”(迫力の人力ベースミュージックにアレンジ)あたりで、息を飲むようにじっくりと見守っていたオーディエンスもいつしか大盛り上がりしている。MCとなると、途端におずおずとして可愛らしいのも魅力的だ。


似ているという意味ではなく、プリンスシャーデービョークらの驚異的な独創性を連想させる才能がそこにはあった。彼女がシーンを牽引する存在となる日も、そう遠くはないだろう。(小池宏和)
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