スティングの超現役ぶりに圧倒された幕張メッセ公演、オールタイム・ベストなのに懐かしさより新鮮な興奮が宿った驚異のライブを観た!

スティングの超現役ぶりに圧倒された幕張メッセ公演、オールタイム・ベストなのに懐かしさより新鮮な興奮が宿った驚異のライブを観た! - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

福岡を皮切りにスタートしたスティングの約2年ぶりの来日ツアー、その幕張メッセ公演の初日を観た。今回のツアーは事前予告通りザ・ポリス〜ソロを包括した豪華オールタイム・ベストなツアーだ。ただし懐かしのヒット曲をただ「再現」するのではなく、1曲1曲に意匠を凝らしてモダナイズしていく言わば「再生」としてのベスト・ヒット・ショウで、その背景にはセルフ・カバー・アルバムという名の新解釈アルバムだった新作『マイ・ソングス』の存在がある。

例えば、オープニングの“Message In A Bottle”ではケヴォン・ウェブスターのジャジーなキーボードが前面にフィーチャーされていたり、“Englishman In New York”では艶やかなクワイアが効果的に取り入れられていて、この曲の奥行きをより感じられるアレンジになっていたりと、スティングの定番中の定番であるこれらの曲にはっとするような新鮮な感覚が宿っているのだ。ベースを抱えて颯爽と登場したスティングはプレイヤーとしてもシンガーとしてもキレッキレに仕上がっていて、“If I Ever Lose My Faith In You”のベース・リフのかっこよさたるや! それはロックンロールに立ち返った『ニューヨーク9番街57丁目』以降の彼のモードでもある。“Every Little Thing She Does Is Magic”までの冒頭5曲はまさに代表曲揃いで、それをノンストップで走りきってしまうというなんとも贅沢な幕開けだ。

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メンバー紹介を挟んでの中盤は、バンド・メンバーにそれぞれフォーカスを当てていくバラエティに富んだセクションだった。ハーモニカのシェーン・セイガーがスティーヴィー・ワンダーのパートを担当した“Brand New Day”、メアリー・J. ブライジとのコラボ曲“Whenever I Say Your Name”ではコーラスのメリッサ・ムジークがブライジのパートを担当、しっとりメロウなデュエットに。流れるように流麗なフォルムの中で加速と減速を繰り返していく“Seven Days”では、ドミニク&ルーファス・ミラー親子のギターが刻むポリリズムも生きていて、前半よりずっとアバンギャルド。そしてシャギーとのレゲエ・コラボ・アルバムとして話題になった『44/876』からのナンバー“If You Can’t Find Love”では、同作にも参加したコーラスのメリッサとジーン・ノーブルが主役だ。スティングがバンマス的立ち位置で采配したこの中盤は、彼のレゲエやジャズの側面がより強調されたセクションだったとも言える。

スティングの超現役ぶりに圧倒された幕張メッセ公演、オールタイム・ベストなのに懐かしさより新鮮な興奮が宿った驚異のライブを観た! - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

そしてショウも後半に入り、“Walking On The Moon”〜“So Lonely”では満を持してジョシュ・フリーズのドラムスが炸裂、最大の見せ場を作っていく。彼は全身を使って打ち込んでいくダイナミックなプレイスタイルのドラマーで、表情一つ変えずに凄まじい手数を軽々とこなしていく(ように見える)スチュアート・コープランドのそれとはかなり異なるけれど、それだけに“So Lonely”などは「Lonely Lonely……」と繰り返しラガのようにシャウトするスティングとも合間って、原曲よりはるかにぶっとくタフな仕上がりになっていた。そこから一転、重厚なシンセも加わってアラビアの迷宮を思わせる複雑なバンド・アンサンブルで聞かせる“Desert Rose”へと続くコントラストも素晴らしかった。

それにしても今年68歳になったスティングの若々しさはただごとじゃない。きっちりラーメンを平らげても微塵も緩みのない引き締まった身体はまさにスター!という感じだし、“Desert Rose”や“Frigile”では45年近いキャリアの中で熟成された深みのある歌声を聞かせる一方で、“Roxanne”などではあの20代の若造仕様のハイキーを今なお全く衰えを知らない、張りのある瑞々しい声で歌いこなしてしまうのだ。もったいぶった間や回想タイムは皆無でテンポよく進んでいく構成や、派手な映像や特効もなく音楽の力に特化したパフォーマンスによって凝縮されたこの日の濃厚な体験は、無駄を削ぎ落として表現の核心に近づいていく、スティングの肉体と歌と精神の美によって生み出されたものなのだ。(粉川しの)

スティングの超現役ぶりに圧倒された幕張メッセ公演、オールタイム・ベストなのに懐かしさより新鮮な興奮が宿った驚異のライブを観た! - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

スティングへ取材した模様を綴ったブログは以下。

来日中のスティングのインタビューに成功! ポリスからソロ最新作まで取り上げた『マイ・ソングス』と現在のツアーにみなぎるパワーの源泉とは何か? 気になるすべてを訊いた!
ポリスから現在の楽曲までをあらためて取り上げたセルフカバー・アルバム『マイ・ソングス』を引っ提げて来日中のスティングにインタビューしました! スティングは、ツアーをコンスタントに続けていながらも、レコーディングに関していえばルネサンス音楽の発掘や冬の伝承歌のカバー、あるいは自作曲のオ…
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