ヒュー・コーンウェルの来日公演を観た! ストラングラーズ&ソロの軌跡を丁寧に紐解き、深く染み入るライブを堪能

ヒュー・コーンウェルの来日公演を観た! ストラングラーズ&ソロの軌跡を丁寧に紐解き、深く染み入るライブを堪能 - pic by Yuki Kuroyanagipic by Yuki Kuroyanagi

パンク勃興期に居合わせたリアルタイム世代のバンドとして、かつて絶大な人気を誇ったザ・ストラングラーズ。オリジナル・パンクスというよりは実験的なパブ・ロック・バンドだったが、その果敢なアティテュードはどこまでもパンクだったと誰もが認めるところだ。バンドは今も活動を続けているが、このたび1990年に脱退してソロ活動を続けているヒュー・コーンウェルが来日を果たした。

現在のツアーでヒューは、自身のソロ作品とストラングラーズの作品を2部制で披露しているようだが、今回の公演でもそれぞれ数曲ずつ取り上げていく構成になっており、まんべんなく自身の足跡を披露していく内容のライブだった。ヒューの硬質でエッジの効いたギターとボーカルを、ソロとストラングラーズ時代の楽曲とが常に入れ替わるなかで堪能することができた。特に序盤から中盤へ向けては自身の身上である鋭角的なサウンドとパフォーマンスを叩きつけていく内容だったが、終盤に向けて聴きやすい楽曲を取り上げ、ライブそのものをまとめ上げていく采配もさすがだ。

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いつも通りトリオで登場すると、オープナーを飾ったのは2018年の『モンスター』からの“Pure Evel”で、ブルースがかったビート・パンクをたたみかけ不穏な歌詞を歌い上げていく。現代社会の悪意を擬人化したような歌詞だが、このサウンドに乗ると妙にロバート・ジョンソンばりの凄味をかもしだすところが絶妙だ。

間髪入れず続くのは『モンスター』からの“La Grande Dame”。どこか60年代のサイケ・ロックっぽい調べを思わせるギターのコード演奏をゆったりと聴かせるバラードで、これもまた不気味な太母的存在を歌うもの。そしてギター・リフとベース・リフがほとんど喧嘩し合っているようなパンキッシュなポリフォニーを聴かせるストラングラーズの“Goodbye Toulouse”を披露したところで、ようやくヒューのMCへ。

『モンスター』とストラングラーズの曲を聴いてもらっているよと説明し、『モンスター』をアピールしながらも、続いては前作『Totem & Taboo』からのナンバーになると紹介。いずれも“I Want One Of Those”、“Stuck In Daily Mail Land”とギターをかき鳴らすインディ・ポップ・ロックだが、消費社会やメディアへのヒューのコメントとなった楽曲で、彼の生真面目さを映し出した問題提起となっている。

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こうした楽曲に続いては、パンク全盛期のストラングラーズの“Hanging Around”と“Duchess”を披露するなど、選曲についても抜かりがないし、ファンの期待にきっちり応えるところもさすがだ。さらに“Monster”、1979年のソロ・アルバム『Nosferatu』から“Mothra”と続き、ストラングラーズの“Golden Brown”へ。ここまでのエッジーで硬質な楽曲から、むしろコード展開のダイナミズムやメロディ、そしてグルーヴが聴きやすい楽曲へと構成がシフトし、ストラングラーズ“Always The Sun”へと雪崩れ込む。

同じ流れでコーラスとブリッジ部分のギターもしびれる“Bilko”や“The Most Beautiful Girl In Hollywood”へと続き、トリオとしてのパフォーマンスも含めて、このくだりが一番聴き応えがあったように思ったし、本来なら大ヒットするはずだと信じていたという“Always The Sun”へのヒューのこだわりもよく伝わってきた。

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ライブの仕上げは、ストラングラーズ“Nuclear Device”、さらに“Dreaming Again”で本編終了。アンコールは“No More Heroes”だった。本国イギリスに住んでいれば、ストラングラーズとヒューの現在という状況ももっとわかりやすいのかもしれない。しかし、日本では90年代以降、どこか縁遠くなっていたストラングラーズとその後の自身の足跡を、ヒューがこうして紐解いてくれてとても感慨深いライブとなった。(高見展)
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