目を覆いたくなるくらい赤裸々な思春期の妄想と焦燥を歌った『十七歳』からおよそ7年。理想と現実の間で引き裂かれる感覚と向き合ったのが、この『二十九歳』だ。“スクランブル”では、小出祐介と関根史織による甘酸っぱいデュエットで《まじわる光と影/僕は真ん中を行って/かさなる光と影/その向こうにある普通を感じたい》と歌っている。光と影。理想と現実。相反するものが同居する、その矛盾が「普通」なんだと言い切る強さが、今のBase Ball Bearにはある。だからこそ、こんなにも清々しく開放的なサウンドになっているのだろう。ファンタジーやノスタルジーに浸るほど感傷的にはなれないし、かと言って、現実だけを直視していたって退屈でつまらない――そんなどっちつかずで平凡で、それ故に生々しい感覚が、たったワンフレーズに射抜かれる。巧みな言葉遊びや、小気味よくクセになるメロディに乗せ、シリアスでヘビーなことをポップに聴かせることができるのが、彼らのクレバーなところだと思う。その毒気あるポップさと的確さで、さらに颯爽と「普通」を暴いていってほしい。(若田悠希)