【コラム】Base Ball Bearの挑戦が今撃ち抜くもの。小出の発言で「音圧」「時代」を解く

【コラム】Base Ball Bearの挑戦が今撃ち抜くもの。小出の発言で「音圧」「時代」を解く

現在発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』9月号(http://ro69.jp/product/magazine/detail/127931)に掲載されている、Base Ball Bear・小出祐介のロングインタヴュー。「『誰もがiPhoneやスマホで音楽を聴く時代』がなぜロックバンドにとって不利なのか」という命題についての考察と、それに対するベボベからの回答としてのCD2枚組シングル=「エクストリーム・シングル」の3ヶ月連続リリース、特にその第1弾=『「それって、for 誰?」part.1』について語ったものだ。以下、トータル6ページのインタヴュー本編の軽く倍以上話してくれた内容からのアウトテイクを交えながら、彼の現在のモードをさらに検証していくことにする。

Base Ball Bear「それって、for 誰?」part.1

《最初のコードがCだったとして、Cを鳴らした瞬間、もう全員Cが合ってないんですよ、本質的には。Cっていう『音の幅』の中には入ってるけど、本当のどジャストのCっていうのは誰も鳴らせてない――誰かひとりは鳴らせてたとしても、っていうかもっと細かく言えば、弦が1本だけちゃんとCを鳴らしてたとしても、全員が必ずしも同じCを鳴らしてるとは限らない》

小出は今回『JAPAN』のみならず事あるごとに、ロックバンドが電子楽器に対して本質的に持っている「周波数的な弱さ」と「わかりにくさ」について指摘している。「音圧感って、音量を突っ込んでる/突っ込んでないとはまた別で。ちゃんとした音階が、ちゃんとした状態で織り重なってるのもでかい」という話を、彼はこんな事例を挙げて説明していた。

《ケータイの着メロって、昔は自分で打ち込んだりして、それ専用の本が出てたりして。で、そこからちょっと進むとi-modeとかが出てきて、自分の好きな曲をダウンロードして着メロにするっていうのをやってたじゃないですか。そこで当然、各社で着メロの音質競争が起こったと。あるところは『美麗16和音サウンド』とかいって、ドラムとかベースとかストリングスとか、それっぽい音色がちゃんと入ってて、原曲のイメージを引き継いでるアレンジのサウンドを出してたんです。それに対して、ドワンゴがやったのはまったく逆で。一個一個の音をユニゾンにして、音圧を上げたんです。そうなると、ケータイのちっちゃいスピーカーで鳴らした時に、美麗サウンドだとフワーッと広がっちゃうわけですけど、そのドワンゴのやつは全部ユニゾンで鳴ってるんで、音圧が稼げると。それでケータイ着メロの業界で1位になったんです。それは単純に、ユーザーが一番『わかりやすい』と思ったからそれを選択したと。それを、音楽にまったく携わってない一般のユーザーの人が選んだっていうのはわかるんですけど、音楽の専門家、評論家の人にも聴き比べてもらって『どれが一番いいか』って訊いたら、選んだのはドワンゴだったんですよ》

そして、このインタヴューのもうひとつのカギとなっているのが、小出の原動力となっている「違和感」の正体についての話だ。「その違和感の正体がいまいちよくわかってなかったし、感覚的なものだったんですよ。それがわりと最近はっきりしてきたっていうか。要は俺、極端に同調嫌いなんですよ」「わかりやすいものがいい、っていう図式そのものは人間の真理だから否定しないけど、そこに人が群がっていく構図が、どうしても気持ち悪く感じるんですよね」という発言を記事でも掲載しているが、その「わかりやすいものがいい、っていう図式そのものは〜」の直前、彼は自分の「同調嫌い」を実感したエピソードを以下のように話していた。

《一昨年ぐらいかな? サッカー日本代表が何か劇的な勝ち方をした時に、『これは渋谷は大変なことになるぞ』って、渋谷の109の辺りで観察してたんですけど……スクランブル交差点の真ん中で知らない人同士がハイタッチしてるんですよ。最初は試合終了直後だったんで、試合結果を喜び合いたいっていうファン同士のちっちゃな人波だったのが、どんどんビッグウェーブになっていって。『祝い合いたい』っていう意味が抜け落ちて、そこにあるのは行為だけなんですよ。信号が青になった瞬間、人がウワーッて走っていって、真ん中でぶつかり合うだけになってたんです(笑)。その『協調』が『同調』に変わる瞬間を観察してて……クソ気持ち悪いなと。これが俺、一番嫌いなんだなってよくわかったんですよね。ああなることが、僕やっぱり自分自身どうしても許せないし。それが気持ち悪いと思ってきてたから》

70〜80sディスコファンク調のビート感。“The Cut”でのRHYMESTERとの共演で解き放たれたヒップホップ的な言語感覚。誰もが発信者になれるSNS時代を《で、それって for 誰?/言わなくていいことばっかりだ》と喝破しつつ《『こういうこと言っちゃってるこの曲こそ for 誰?』》とその批評の刃を自らにも向けてみせる闘志。デビュー以降その「違和感」を清冽なギターロックに重ね合わせてきた小出祐介は、今回の“「それって、for 誰?」part.1”でまったく新しいチャレンジング・スピリットをもって僕らの前に立っている。エクストリーム・シングル第2弾『文化祭の夜』(9月2日発売)、第3弾『不思議な夜』(10月7日発売)のリリースも決定しているし、『「それって、for 誰?」part.1』3曲目の“アルバム特報”は新作アルバム到来がそう遠くないことを告げている。いよいよ目が離せない。(高橋智樹)

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