バンドの矜持と貫禄が聴こえる名曲
NICO Touches the Walls『TOKYO Dreamer』
2014年08月20日発売
SINGLE
8月19日に開催する武道館ワンマンを2014年のひとつのピークに見据え、コンスタントにシングルをリリースしてきたNICO。今年3枚目となる本作のタイトルに見覚えがあるなと思っていたら、わかった。2010年、彼らはライヴで訪れていなかった地方に赴き、未発表曲を積極的にセットリストに組み込むという、アグレッシヴなモードを滾らせて臨んだ「ミチナキミチ」という全7本のツアーを敢行した。“TOKYO Dreamer”はその山口公演で披露された。当時、メンバーはこの曲を禁じ手にしていた四つ打ちを採用したダンス・ポップだと語っていた。しかし、あれから4年後の“TOKYO Dreamer”はダンス・ポップの文脈にある曲ではない。2サビから四つ打ちのダイナミズムを解放するのだが、そこに至るまでは「東京と夢をめぐる戦い」をシンプルかつリリカルな筆致で綴った光村の歌を、過不足ないアレンジでじっくりとドラマティックなロック・ソングへ彩っていく。この抑制の美学こそ素晴らしいし、彼らの音楽的な成熟と曲に対する揺るぎない自負が感じ取れる。堂々たる普遍性をたたえた名曲の誕生だ。(三宅正一)
2014.08.20 22:00