これほどポジティヴに攻め込んでくるとは、正直、予想していなかった。昨年、突然解散してしまったマイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイが以前から作っていると噂されていたソロ・アルバムは、本人曰く〈シューゲイザーやブリットポップからの影響を反映〉というように彼がリアルに触れてきたさまざまな音を自分の体内を通過させて吐き出したものだが、そのどれもが肯定的、かつ前に進むためのエネルギーとなっている。ファズ、ディストーションの効いたギター・サウンドがどの曲からもぶつかってくるが、暑苦しくないのはそのノイズと曲の関係性をしっかりととらえてるからだろう。ピクシーズの姿が浮かぶ“ゼロ・ゼロ”なんてのがあったり、メロディがオアシスを連想してしまう曲が“ブラザー”となってたのには噴き出した（事前情報だと“キャスティング・シャドウズ”だが……）。

先行公開されていた“アクション・キャット”のワイルドな響きから、ちょっとロマンチックなトランスの香り漂う“ドラッグストア・パフューム”の美しさまで、どのトラックもやりたいことが見通せるアルバムで文句なしの再スタート。（大鷹俊一）