素直な筆致。近しい呟き。素直な歌。穏やかに鳴り続けるビート。まるでYUKIの息遣いを受け取るようなアルバムだ。ガンガン聴いているうちにガンガン元気になってくるエナジードリンクのような作用をこれまでの作品だとするなら、これはお気に入りのブレンド豆を自分でミルしてじっくり淹れたとびきりのコーヒー、そんな感じがする。という表現は実はだいぶ恥ずかしいのだが、要するに本作は、「自分ひとりでいるときの自分」をさらけ出させてしまうアルバム、ということだ。しかも本当に心地よい。
ただし、聴けばわかるように本作は100%のダンスアルバムである。しかし、ファイティングポーズ全開のアッパーモードではなく、季節の移ろいや人生の意味や、恋が愛に変わる瞬間や夜空を見て深呼吸する気持ちや真夜中の電話を思い、時間を重ねる中で出会う心の揺らぎをそのままダンスに喩えたような、パーソナルなボディミュージックだ。重い足取りを地表から1cmだけ浮き上がらせてくれるこの静かなポップアルバムを『FLY』と名付けたYUKIはやはり大事なことをとてもよくわかっている人なんだなあと思う。(小栁大輔)
1cmだって“FLY”なんだ
YUKI『FLY』
2014年09月17日発売
2014年09月17日発売
ALBUM