前作『街の14景』でthe band apartが日本語曲を演奏するようになり、よりダイレクトに「意味」と一緒に鳴り響くようになったことで、そのクールなグッド・メロディ＆プログレ・バンドばりに緻密に張り巡らされた音のタペストリーの中に潜んでいた「エモーショナルなロックンロール感」が浮き彫りになったことは、バンアパ自身にとって実に大きなパラダイム・シフトだった。そしてそれは、1年9ヵ月ぶりの7thアルバムとなる今作からさらにはっきりと伝わってくる。タイトルに冠した「オープンワールド」という用語、アルバム全体を3つのブロックへ分割する4つのスキット……といったゲーム的な枠組みを与えられた今作。ブレーキ壊れた極彩色の爆走を聴かせる“笑うDJ”、《絆と言わないでくれ　耳が腐る》と風のようにさらりと歌い上げるディスコ・ファンク“禁断の宮殿”、灰色の諦念に曝される日常の中で「その先」への不屈の想いを綴る“最終列車”……誰もが永遠に解くことのできないRPGの如き僕らの人生を、それでも懸命に一歩ずつ前へ進めていくような力強さに満ちた快盤。（高橋智樹）