ここ日本でも、近年UKベース~ジューク/フットワーク等の先鋭的なダンス・ミュージックのファンの間で浸透し、昨年には10周年を迎えたレーベル、ハイパーダブ。その創始者であるコード9ことスティーヴ・グッドマンのニュー・アルバムが本作。ソロ名義では初のフル・アルバムとなるが、文字通り本作はそのキャリアの代名詞的な作品にふさわしい内容と言えよう。グライムやダブステップを経てUKクラブ・シーンを牽引してきた自身の活動歴をリプレゼントしつつ、さらにホラー映画のサウンドトラックやゲーム音楽の要素まで取り入れたという奥行きと射程の長さを披露するサウンド。しかし、リード・トラックのM10が物語る通り、緻密な構成ながらもあくまでミニマルなタッチで整えられ、ダンス・ミュージックの域を押し広げたモダンで洗練された音のフォルムが印象的だ。本作では「無」がテーマだそうだが、それはもしかしたら禅の美学、つまりは固定観念を捨てて本来の自分に出会うという境地に通じるものなのかもしれない。盟友のDJラシャドとスペースエイプ亡き今、この男の双肩にかかるものは大きい。(天井潤之介)