西海岸ニュー・ガレージ/今風サーフ・パンクのユルくも自己卑下まみれな「負け犬(の遠吠え)」感性を象徴する存在であるウェーヴスも、なんとこれで堂々5作目。スコーン!と突き抜けたブレイク作『キング・オブ・ザ・ビーチ』に続き、前作ではウィーザーやグリーン・デイら90年代のオルタナ・ポップはもちろん、ファジィなサイケデリアへの目配せも、と音楽性を広げていて頼もしかったが、本作は「原点回帰」と言える比較的直球な音作りのパンクな爆風が朗々と吹き抜けるアルバムになっている。
本作の前に発表された「ハスカー・ドゥの落とし子」ことクラウド・ナッシングスとのコラボを経て何かが吹っ切れたのかもしれないが、ほとんどの楽曲は3分以内の潔さ、相変わらずキレの良いキャッチーなフックや歌メロも輪郭をクリアにしているし、サビでギターがどしゃめしゃにうなる展開も溜飲が下がる。本来の魅力を維持しつつステロイド剤で要所を強化した内容と言ってもいいが、安定ではなく、ジャケットのイメージやひたすら「オレ、ダメ男」でぶっちぎる歌詞から浮かぶメンタル面でのクライシスとのギャップが妙にスリリングでもある。(坂本麻里子)
もんどりうつハートのために
ウェーヴス『ファイヴ』
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