面目躍如のローファイ流儀

ウェーヴス『ユーアー・ウェルカム』
発売中
ウェーヴス ユーアー・ウェルカム
盟友クラウド・ナッシングスとのコラボも記憶に新しいウェーヴス。その共同作業を通じて曲作りをシェアすることに楽しみを覚えたフロントマンのネイサンの意向もあり、バンド・メンバーとの共作曲が大半を占めた前作の『Ⅴ』だったが、この6作目では真逆の展開に。他のメンバーがクレジットされたのは一曲のみ。7年前の出世作『キング・オブ・ザ・ビーチ』を手がけたデニス・ヘリングを共同プロデューサーに迎え、ネイサンひとりでほとんど曲を作り上げてしまったらしい。

十八番のガレージ・ロックやサーフ・ポップを鳴らしながらも、耳を引くのは随所に施されたエフェクトやノイズのガジェット感。かと思えば、ドゥー・ワップが始まったり南米音楽のフレーズが聴こえたりと、なんとも騒々しい。そのローファイな手触りは、初期のノー・エイジらと一緒に「No-Fi」や「Shitgaze」と呼ばれていたデビュー当時を思わせる。白眉はカートゥーン風味のラヴィン・スプーンフルといった6曲目。いまやブリンク182とも共演を果たすウェーヴスだが、あの異彩を放っていた“初心の輝き”はいまだ失せていないようだ。 (天井潤之介)
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