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    こちらもまた孤高の職人

    クリス・ウォラ『テープ・ループス』
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    ALBUM
    クリス・ウォラ テープ・ループス
    昨年になって突如デス・キャブ・フォー・キューティーを脱退したクリス・ウォラのソロ・アルバム。個人名義による作品は、08年にリリースした『フィールド・マニュアル』以来となるが、その内容は、前作ともデス・キャブでやってきたことともかなり違う。ここで聴けるのは、タイトルに表れている通り、アナログ・テープを使ったループをベースに作り上げられたインストゥルメンタル作品だ。直接的には、ブライアン・イーノが70年代末から展開した環境音楽に強く影響を受けているっぽい。

    しかし、そこはクリスのこと、音の柔らかさと温かみはアナログの良さを最大限に引き出しているし(※現代の音楽制作の現場でこの技術を持つ人は、もはや世界にほとんどいないだろう)、全体的に楽曲構造は平坦でありながら、どことなくメロディアスで、極端なことを言うとポップささえ感じさせる。ベン・ギバードの珠玉のソングライティングと、このサウンド・センスが結びついたところにデス・キャブの音楽はあったのだなと、あらためて深く実感した。1曲目のタイトルにも表されている通り、どうやら日本から得たインスパイアも大きいようだ。(鈴木喜之)
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