シーアはシンガー・ソングライターとしての活動の傍ら、売れっ子職業作曲家として数多くのアーティストに楽曲を提供しているが、本作はアデル、ビヨンセ、ケイティ・ペリー、リアーナ、シャキーラなど他アーティストのために書き下ろしたものの発表されずに終わった楽曲を集めたものだという。
メディアに一切顔を出さないというポリシーからもうかがえるように、シーアには匿名的な存在でありたいという思いがあるようだ。それは音楽をアーティスト個人のキャラクターに従属させるのではなく、楽曲そのものの強度で勝負したいという思いなのだろう。本作収録曲も、そのクオリティの高さは驚倒のほかない。しかしボツになったのは、シーアのキャラクターが強く投影されているからではないか。つまり職業作曲家では収まりきらない彼女の実存がマグマのように噴き出て楽曲を染めていく、その瞬間にこそ、シーアの音楽のリアルがある。本作はそれを生々しく示している。(小野島大)