90年代から活躍をつづける轟音インスト(時々歌入り)バンドの雄。シガー・ロスも日本のポスト・パンク・バンド、MONOも彼らの存在なしには語れない。そんなモグワイ期待の新作は、昨夏BBCで放送されたマーク・カズンズ監督による同名ドキュメンタリーのサウンドトラック。だが、さすがモグワイ―一筋縄ではいかない。それは(このタイトルからして当然なのだが)いわゆる「核」をテーマとしたもの。福島やチェルノブイリの件も取り上げられていた。そのうえこの音楽には、彼らが広島を実際に訪れた際の体験も反映されているらしい。日本に暮らす者には重すぎる? しかし実際何度も聴くと、まったくそんなことはない。不思議。インスト・バンドとして長年やってきた彼らの経験から、言葉の持つメッセージ性に必要以上に頼っていないからか? いや、それ以上に、たとえば「『原子力こそ夢のエネルギー』みたいに言われていた時代があったなんてことは、今となっては想像もつかない。だが、それはたしかに存在した。なんと悲しいことだ……」みたいなエモーションさえ、ここには激烈にこもっている、そんな気がする。(伊藤英嗣)